おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『江戸川乱歩傑作選』 江戸川乱歩 気持ち悪いがはまりそう

   

書評的な読書感想文161

『江戸川乱歩傑作選』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

江戸川乱歩(作家別索引

新潮文庫 1960年12月

ミステリー ホラー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

初期を代表する傑作9編。江戸川乱歩にはまりそうです。異様なフェチズムを描いており、強烈なインパクトがあります。気持ち悪いのに読むのが止まらない。また、明智小五郎と犯人の心理合戦を描いた作品も面白い。

 

 

あらすじ

日本における本格探偵小説を確立したばかりではなく、恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説をも創り出した乱歩の初期を代表する傑作9編を収める。特異な暗号コードによる巧妙なトリックを用いた処女作「二銭銅貨」、苦痛と快楽と惨劇を描いて著者の怪奇趣味の極限を代表する「芋虫」、他に「二癈人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」。 (作品紹介より)

 

 

「少年探偵」シリーズだけじゃない

私の中の江戸川乱歩のイメージといえば、『怪人二十面相』を初めとした「少年探偵」シリーズで、中学生の頃何冊か読んだきりでした。そんな中で、このブログで以前紹介した『ビブリア古書堂の事件手帖4』を読んで、大人向けの幻想・怪奇小説や犯罪小説も書いていて、特に幻想・怪奇小説が怪しげで魅力的な作品が多いと知りました。

 

それ以来、気になっていて今回やっと読みました。とりあえず、面白い。はまりそうです。

 

 

「芋虫」異常なのに共感できる

収録されている9編の短編の中で、ダントツにインパクトがあり、怪奇的でグロテスクな作品。

 

戦争で四肢を失い、しゃべることも聞くことも出来なくなった夫もった女性の話です。大きな黄色い芋虫のような夫と、田舎の閉ざされた世界でひっそりと暮らしている女性が、異常の性愛にのめりこむ様子は鬼気迫るものがあります。また、夫の容姿の描写はリアルでグロテスクです。

 

これらのことだけでも、十分インパクトがあって印象に残りますが、この作品のすごいところは、異常な状況の異常な心理状態になぜか共感できてしまうことです。100%自分に頼りきっている対象を、疎ましく思いつつも庇護欲をかき立てられる心理に共感でき、倒錯した性交にのめり込む様子にも不自然さを感じません。

 

ラストの夫の行動も秀逸で、この短編だけでも読む価値のある傑作です。

 

 

明智小五郎の心理合戦

江戸川乱歩といえば明智小五郎を生み出したことで有名ですが、今回の作品でも明智小五郎が活躍する作品がいくつかあります。私が意外に思ったのは、明智小五郎がいわゆるミステリー小説っぽく犯人のトリックを暴くのではなく、犯人と心理戦を繰り広げていることです。

 

「心理試験」では、嘘発見器のような機械の判定から潜り抜けた犯人のと明智小五郎の手に汗握る攻防が描かれていてます。「屋根裏の散歩者」でも、トリックを見破るのではなく、犯人を心理的に追いつめる明智小五郎が描かれています。

 

イメージしていたものとは違いましたが、これはこれでかなり面白く、明智小五郎が活躍する他の作品も読んでみたいと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

上に書いた作品以外にも、自分が作った大きな椅子の中に潜り込み、その上に座る人の感触を味わう男の様子を描いた「人間椅子」や乱歩のデビュー作で暗号トリックを使った作品で「少年探偵」シリーズにもつながるようなワクワク感のある作品など、どれも面白い作品ばかりです。

 

特に「芋虫」や「人間椅子」など怪奇的で気持ち悪いのに心理描写がリアルで共感でき、読む手が止まりませんでした。いまさらながら、江戸川乱歩にはまりそうってことで、最高評価星五つです。

 

ちなみに、2016年に著作権が切れて「青空文庫ホームページへ」などでただで読めるようになってます。

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