おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『クラインの壺』 岡嶋二人 バーチャルリアリティ

   

書評的な読書感想文158

『クラインの壺』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

岡嶋二人(作家別索引

新潮文庫 1993年1月

サスペンス SF(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

バーチャルリアリティの世界に迷い込む設定は使い古された感はありますが、真相が見えてきたところから、もう一つ驚きがあるのは流石です。冒頭のフリも効いていて、ちょっと背筋が寒くなるSFホラーです。

 

 

あらすじ

ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることになった青年、上杉。アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになった。ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は……。現実が歪み虚構が交錯する恐怖。(作品紹介より)

 

 

岡嶋二人最終作

今好きな作家で打線を組んでみた」で二番に入っている岡嶋二人さんのデビュー作です。岡嶋さんは日本では珍しい、二人一組の作家さんで徳山諄一さんがプロットを書き、以前紹介した井上夢人さんが執筆するスタイルだそうです(コンビ解散間際は井上さんがプロットのほうも担っていたようですが)。

 

なので「打線を組んでみた」では、岡嶋さんと井上さん両方で二番ということにしています。

 

今回の『クラインの壺』で岡嶋二人名義の作品は最後です。この作品は井上夢人さんがプロットの大部分も担っているようで、これ以降の井上作品につながるものといえます。

 

 

使い古された感のある設定

作中で主人公は、触覚は勿論、味覚までも再現する超リアルなバーチャルリアリティゲームをプレイします。個人的にはマトリックスを連想しましたが、どこかで見たようなSF映画のような設定です。妙にセキュリティが厳しい研究室や産業スパイの影などだんだん物語はきな臭くなります。

 

と、ここまであらすじを書いてみると、なんだかとても使い古された感のある設定でちょっと残念な感じがします。

 

ただ、話を読み進め私なりの真相が見えてきたところで、岡嶋二人さんならもう一段深い真相があるんだろうなと期待しながら読んでいくと案の定、驚かされました。

 

 

背筋が寒くなる

真相にたどり着くと、冒頭部分で主人公が廃屋に一人隠れ、これまであった出来事を記録するという前振りも効いているのが分かります。

 

また「クラインの壺」というタイトルの意味も理解できます。ちなみに「クラインの壺」とは数学の用語で立体版「メビウスの輪」のようなもので、内側と外側の境目がない図形のこと。

 

真相が分かるとちょっと背筋が寒くなるSFホラー作品です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

この作品の初出は今から25年以上前の1989年です。以前紹介した井上夢人さんの『プラスティック』の時にも似たようなことを言いましたが、書かれた当時に読みたかったです。VRという設定は今でこそありがちですが、スーパーファミコンがまだ発売されていない時代でのインパクトは大きかったと思います。

 

ただ、真相に気付いたと思ったらさらに、奥があるところなど、今読んでも十分に面白いどころか、むしろ、ミステリー、サスペンス好きにはおすすめしたいってことで、星四つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,