おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『人形式モナリザ』 森博嗣 サイドストーリーが面白い

   

書評的な読書感想文155

『人形式モナリザ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

森博嗣(作家別索引

講談社文庫 2002年11月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

殺人事件の推理よりも、本筋以外のところが面白い作品。人形や宗教に関する文化人類学的な考察は興味をそそられるし、窃盗事件の真相は殺人事件より意外でした。ただ、ちょっとフェアじゃないような気もしました。

 

 

あらすじ

蓼科に建つ私設博物館「人形の館」に常設されたステージで衆人環視の中、「乙女文楽」演者が謎の死を遂げた。二年前に不可解な死に方をした悪魔崇拝者。その未亡人が語る「神の白い手」。美しい避暑地で起こった白昼夢のような事件に瀬在丸紅子と保呂草潤平ら阿漕荘の面々が対峙する。大人気Vシリーズ第2弾。(作品紹介より)

 

 

Vシリーズ第二弾

以前紹介した『すべてがFになる』の森博嗣さんのミステリーシリーズで瀬在丸紅子を主人公とした、「Vシリーズ」の第二弾です。前作の『黒猫の三角』で活躍した主人公の瀬在丸紅子は当然ですが、ボーイッシュで豪快な性格ながら意外に乙女な香具山紫子、少林寺拳法の使い手ながら女性的な性格で女装癖のある男子医大生、小鳥遊練無、何でも屋の保呂草潤平などのレギュラー陣の掛け合いは相変わらず楽しいです。

 

今回は紅子の元旦那林とその現在の恋人祖父江七夏も出てきて、にぎやかさが増しています。キャラクターの掛け合いを楽しむのもこのシリーズの醍醐味だと思うので、個々の事情が詳しい『黒猫の三角』は先に読んだほうが楽しめると思います。

 

 

本筋以外が面白い

このミステリーは、直接の下手人さがしに、それほど重きをおいていないのだ。作者にしても、犯人が見抜かれることは、あらかじめ織り込みずみであったろう。(P397)

と解説で考察されているように、本筋の殺人事件とそのトリックは割りとありがちかもしれません。ただ、この話、面白いのはそこではないと思います。

 

個人的に面白かったのは、人形や宗教についての文化人類学的な考察。例えば人形について

人の形、動物の形を真似て、人形は作られた。それが最初である。そこに、生命に近い存在が宿る、と太鼓の人々は夢想したであろう。自然な発想といえる。(P57)

という考察が、なぜか紆余曲折を経て

現在、最高の人形とはコンピュータである。(P59)

という結論になる。前作の『黒猫の三角』の紹介のときにも書きましたが、相変わらず森博嗣さんの独特な考えが炸裂しています。

 

 

サイドストーリーが面白い

本筋の殺人事件以外にもいくつかのサイドストーリーが物語を彩ります。例えば、地元の画家の絵が美術館から盗まれる事件。手口から、数年前に活動していた完璧な仕事をする美術専門の窃盗犯の可能性が高いことがわかります。ただ、それほど価値の無い絵をたった一枚だけなぜ盗んだのか、動機が不明です。

 

他にも、ある有名作家が愛人に残した1000体以上もある人形。このなかには、その作家がモナリザと名付けた人形がまぎれていることがわかっています。それはいったいどれなのか。

 

この二つの話は、真相が明らかになった時、殺人事件の犯人がわかった時よりも驚きました。ただ、ちょっとアンフェアかな。前作でも、ちょっとフェアじゃないところがあったので、このシリーズは合わないと考えてしまう人がいてもおかしくないかなって思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

すべてがFになる』の「S&Mシリーズ」に比べ変化球なのが「Vシリーズ」の持ち味なのかなって思わされた今作品。本筋の推理よりも、レギュラー陣の掛け合いや、サイドストーリーが面白いってことで星三つです。

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