おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『株主総会』 牛島信 企業法律小説だけどそこまで難しくない

   

書評的な読書感想文153

『株主総会』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

牛島信(作家別索引

幻冬舎文庫 1999年4月

経済 お仕事(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

弁護士が書いた企業法律小説。ちと古く、きちんとした勉強にはならないが、スリリングな物語を楽しみながら、株主総会や株式会社について学べます。無駄な文学的表現がなく、スピーディーに話が進むのも良いです。

 

 

あらすじ

リストラ目前の総務部次長が株主総会で突如社長を解任し、年商二千億の会社を乗っ取った。いったい何が起こったのか?総会屋問題で揺れる日本中の大企業の経営者たちを恐怖のどん底に叩き込んだ衝撃のベストセラー早くも文庫化!現役の超一流弁護士が商法上可能な限り熾烈な攻防を描き、企業に生きる男たちの存在理由を問う企業法律小説。(作品紹介より)

 

 

弁護士が書いた企業法律小説

物語は、リストラ目前の総務部次長が株主総会の委任状を総務部次長の名前で集める習慣を逆手にとって、社長を解任、会社を乗っ取るところから始まります。こうやって書くと、荒唐無稽な話にしか思えないが、この話を書いている人がなんと一流弁護士さん。

 

私がこの小説を思いついたのは、ある上場企業の株主総会の準備に参画していた時、そのリハーサルの途中である。目の前で議長役を務めるその会社の社長さんを眺めているうちに、総務の人間への委任状の取りつけを、弁護士特有の限界事例として、純粋の法律論として、「大丈夫だろうか」と考えはじめたのである。(P197)

とあるように、法律論が発端なので、単なるフィクションではなく、少なくとも当時は、実際に起こるのではないかと思えるリアリティーがある話です。

 

また、初出は1997年なので、おそらく現在の実情とは異なっていることもあるでしょうし、きちんとした勉強をしたいのなら専門の本を読むべきでしょうが、スリリングな物語を読みつつ、楽しみながら株主総会や株式会社の仕組みを、何となくですが学べます。

 

 

無駄のない描写とスピーディーな展開

この作品の売りは専門知識に裏打ちされたリアリティーとスリリングな展開だと思います。リストラ目前のサラリーマンが上場企業を乗っ取る展開はスリリングで、要所要所である、弁護士や裁判官の法律論は、専門的でリアリティーがあります。

 

ただ、個人的にこの作品が秀逸だと思った点は、無駄な描写がほとんどないことです。つまり、男女の恋愛や濡れ場がほとんどない(ほとんどなので、少しはある。個人的にこの少しもいらないと思いました。)ことです。

 

そのため、ほぼ会社乗っ取りに関する話のみが語られ、物語がスピーディーに進みます。濡れ場なんぞ無くても、法律論だけで十分の面白いです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

ある登場人物が言います。

「これは、いつもお前がいる世界とは異次元の世界なんだ。早い話、お前さんはルールの分からない戦争に紛れ込んだようなものなんだよ」(P41)

これは、読者の代弁とも言えるセリフなのですが、物語が進むうちに徐々に戦争のルールが理解できて、ちょっとした勉強にもなるし、何より面白いです。

 

リストラ目前のサラリーマンの会社乗っ取りは成功するのか、最後までハラハラドキドキできるってことで、星四つです。

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