おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『対岸の彼女』 角田光代 ちょっと怖い

   

書評的な読書感想文152

『対岸の彼女』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

角田光代(作家別索引

文春文庫 2007年10月

友情 青春(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

女性の友情がテーマ。男の私からしたらちょっと怖い所もありますが、友情の危うさや煩わしさ、楽しさに共感できました。また、構成の理由と、タイトルの意味が最後の最後で分かり、読んで良かったなと思えました。

 

 

あらすじ

専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが……。結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

女の友情がテーマな直木賞受賞作

以前紹介した『八日目の蝉』『紙の月』の角田光代さんの直木賞受賞作。物語のテーマは女性の友情です。

 

物語は二つのパートに分かれています。一つは、ママ友とうまくなじめずに、子供と公園を点々とする専業主婦・小夜子が何かを変えたくて働き始めることに。周りの無理解と戦いつつ、とあるベンチャー企業に就職、そこの明るく前向きな女社長と仕事以上の付き合いをすることに。

 

もう一つのパートは、そのベンチャー企業の女社長・葵の高校生のときの話。現在の時間軸での明るく前向きなキャラまったく無く、いじめによって引越ししてしまい、家族に対しても屈折した感情を持つ高校生で、とあるクラスメートとの友情を育む物語になっています。

 

物語は、この二つのパートが交互に書かれる構成になってます。

 

 

ちょっと怖いところも

ちょっと偏見が入っているかもしれませんが、女性の友情はちょっと怖いというイメージがあったのですが、この物語ではそれが的確に描かれています。葵パートの友達だったはずの大人しい女の子が、いじめの空気を察知した瞬間に態度が豹変するところや、小夜子パートの幼稚園ママ友と保育園ママ友グループの違いのところなど、背中がゾワっとすることもありました。

 

ただ、友情を維持するために、あまり気の進まないことでも付き合ったり、仲のいい友達と泊り込みのバイトをすることなど、友情の危うさや煩わしさ、楽しさがうまく描かれていて、すごく共感できました。

 

 

秀逸な構成

小夜子を主人公とした働く女性のパートは、女性の行き方の難しさが描かれています。おそらく男性は、(一応主夫という選択もありますが)ほぼ仕事をして金を稼ぐという選択肢がありませんが、女性は、結婚、未婚、働く、家庭に入る、フルタイム、パートなどなど、生き方の選択肢がものすごく多い気がします。

 

作中でもいろいろな生き方をする女性がいますが、女性同士で他の生き方を選んだ人に対して、足の引っ張り合いをしていて、妙にリアリティーがありました。

 

葵パートでは、小夜子パートで出てくる天真爛漫な葵と全く違うキャラの高校生の葵が、友情を育む話ですが、最終的にいじめられっ子の葵がどうして天真爛漫な葵になれたのか、興味がひきつけられます。

 

二つの物語は、どちらも徐々に緊張感の増す展開になり、最後の最後で二つの物語が交わります。最後に物語が交わった時に初めてタイトルの意味が理解でき、なぜ二つの物語が交互に語られていたのかも分かるようになっています。

 

八日目の蝉』『紙の月』の時にも書きましたが、角田さんは物語の構成が抜群にうまい作家さんだなと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

女の友情をテーマに、女性の生き方やいじめの問題も取り上げてあり、ちょっと怖い内容や重い話もありますが、最後の最後で、物語がすっぽりと収まると読んでよかったなと思えました、ってことで星四つです。

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