おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『栞子さんの本棚』 アンソロジー ファンならきっと満足

   

書評的な読書感想文150

『栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

アンソロジー(作家別索引

角川文庫 2013年5月

アンソロジー 純文学(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

ビブリアの三巻までに出てきた作品を収録してます。本編を読んで気になっていた、『落穂拾い』『たんぽぽ娘』の二つだけで、買った価値がありました。また、長年食わず嫌いをしていた太宰治が思ったより読めました。

 

 

あらすじ

「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ(アスキー・メディアワークス刊)のオフィシャルブック。作品中で紹介されている12本の古今東西の名作タイトル(長編は一部、短編は全篇)を収録。「ビブリア古書堂」店主・栞子さんが触れている世界を体感できる、ビブリアファン必携の1冊。今では手に入りにくい作品や、冒頭を読んでみたいという欲張りな方にオススメです。巻末には、三上延氏の書き下ろしエッセイを掲載。(作品紹介より)

 

 

ビブリア古書堂シリーズのオフィシャルブック

毎度おなじみ「今好きな作家で打線を組んでみた」で投手陣の先発にいる三上延さんの作品、『ビブリア古書堂の事件手帖』、『ビブリア古書堂の事件手帖2』、『ビブリア古書堂の事件手帖3』の作中で取り上げられている本をまとめたのがこの作品。収録されているのは12作品で以下の通りです。

『それから』 夏目漱石 抜粋

『ジュリアとバズーカ』 アンナ・カヴァン 全文

『落穂拾い』 小山清 全文

『サンクチュアリ』 フォークナー 抜粋

『せどり男爵数奇譚』 梶山季之 抜粋

『晩年』 太宰治 短編「道化の華」全文

『クラクラ日記』 坂口三千代 抜粋

『蔦葛木曽棧』 国枝史郎 抜粋

『ふたり物語』 アーシュラ・K・ル・グイン 抜粋

『たんぽぽ娘』 ロバート・F・ヤング 全文

『フローテ公園の殺人』 F・W・クロフツ 抜粋

『春と修羅』 宮沢賢治 抜粋

 

個々に面白い作品もありますが、「ビブリア古書堂」シリーズの三巻までは読んでいないと全体としては楽しめないと思います。

 

 

『落穂拾い』『たんぽぽ娘』

この二作が読みたくてこの本を購入しました。どちらも短編で全文載っていますし。で、毛色は違いますがどちらもちょっと甘い作品です。

 

『落穂拾い』については、作中である登場人物が

「人付き合いが苦手で世渡り下手な貧乏人が、不満も持たねえで生きていく、なんてただの願望だわな。まして、そいつの前に純真無垢な若い娘が現れて優しくしてくれる、なんてあるわけねえじゃねえか」(中略)

「まあでも、そういうことが分かってて作者もあの話を書いたんだろうぜ。それは読めば分かる……あれは甘ったるい話を書く奴に感情移入する話なんだ。」(一巻P121~122)

って言っていますが、私はちょっとファンタジーが入っているけど、いい話だな~くらいの感想でした。ただ、こういう感想をもつ人がいるのは分かるし、読んでよかったなと素直に思える作品です。

 

『たんぽぽ娘』は作中で栞子さんが

「初対面の主人公に向って、彼女はこう言うんです」

栞子さんは内緒話をするように、俺に顔を寄せた。間近で見る彼女の瞳は、興奮を物語るように輝いていた。

「『おとといは兎を見たわ。きのうは鹿、今日はあなた』」(三巻P54、55)

このシーンが印象に残っていたので、気になっていました。で、読んでみると甘いだけでなく、仕掛けや驚きがあって、最後のシーンの余韻も良かったです。収録されている12作品で一番面白いと思いました。

 

この二作品のために買って後悔無しです。

 

太宰治は思ったより読めましたが、好きになるかは別問題

上の二つ以外に印象に残ったのが太宰治の『晩年』に収められている「道化の華」。太宰さんの印象は『ビブリア古書堂の事件手帖6』の紹介のときにも書きましたが、中学生の時に『人間失格』を読んでなんだかすごく暗い気持ちになって、二度と読まないと心に決めてから二十余年です。

 

今回の「道化の華」は心中をして、自分だけ生き残った男性が主人公で、心中直後に入院した病院での、友人達との出来事の話です。メタフィクション的に作者の解説が入ったり、主人公とその友人たちの自尊心の強さや、厚顔なところが、なんだか現代の若者にすごく似ていて、結構楽しんで読めました。

 

ただ、心中未遂で相手が死んでいるのに、お気楽に友人達と会話を楽しむ主人公が気持ち悪かったです。作中では一応わざと明るく振舞っている風な作者の解説が入っていますが、それすら実際に心中未遂をして自分だけが生き残った太宰治本人の言い訳に見えて、好きになれませんでした。

 

結構楽しく読めましたが、好きになれるかどうかは別問題だと思いました。ただ、別の作品もぜひ読んでみようという気になったのは間違いありません。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

他にもハードボイルド&サスペンスな予感がする『せどり男爵数奇譚』や怪しげな雰囲気の『蔦葛木曽棧』などは、全文読んで見たいなと思える作品でした。

 

ただ、おすすめ度しては、シリーズを三巻まで読んでいて、しかもあまり時間がたっていない人でないと(たぶん忘れてしまっているので)楽しめない作品なので、きびし目の星二つです。

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