おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『炎蛹』 大沢在昌 コンビ結成

   

書評的な読書感想文148

『炎蛹 新宿鮫Ⅴ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

大沢在昌(作家別索引

レーベル 2001年6月(ブログで使っている画像などは新装版のものです。)

ハードボイルド 警察(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

鮫島とコンビを組んだ、植物防疫官・甲屋のキャラが良い。また、植物防疫官や消防士の専門分野の話が面白い。事件は、同時多発的に起き、複雑に絡み合っているので、最後はどう解決するか引き込まれました。

 

 

あらすじ

新宿署刑事・鮫島を、犯罪者は、恐れを込めて「新宿鮫」と呼ぶ。植物防疫官・甲屋は、外国人娼婦によって南米から日本に侵入した、“恐怖の害虫”の蛹を追っていた。羽化まで数日。蛹を追って、鮫島と甲屋は、危険と罠に満ちた闇に挑む!命をかけて熱く闘う男たちがここにいる。興奮と感動、圧倒する迫力!傑作長編刑事小説第5弾!(作品紹介より)

 

 

新宿鮫シリーズ第五弾

以前紹介した『新宿鮫』『毒猿』『屍蘭』『無間人形』の続編で、新宿鮫シリーズの第五弾になります。今回も鮫島を初め、レギュラーキャラクターが共通している以外は、ほぼいままでの作品とつながりは無いので、この作品から読んでも楽しめます。

 

 

植物防疫官と消防士

今回の作品、外国人犯罪組織の抗争、連続殺人事件、放火など、いくつかの事件が同時に起き、鮫島と植物防疫官の甲屋が追いかけるという構造になっています。例えるなら、同時多発的に起きる事件が「縦糸」で、鮫島と甲屋を中心とした登場人物たちが「横糸」となり、物語を編み上げるという感じです。

 

この並行して起きる事件を横糸として一つの物語として編み上げる時に、一番重要な働きをするのがゲストキャラの植物防疫官・甲屋です。植物防疫官とは、農林水産省の技官で海外から植物にくっついて害虫や病原菌が日本に入らないようにする仕事です。

 

今作では、「フラメウス・フーパ」と呼ばれる、稲作に甚大な被害を与える甲虫のさなぎが日本に持ち込まれてしまい、植物防疫官の甲屋はひょんなきっかけで鮫島と共にはそれを探すことになります。

 

この甲屋さんがなかなかいいキャラしています。中年の「気の短い教師」よのうな男で、

思い込みが激しく、いったん考えついたことは即座に実行に移さなければ気のすまない性格のようだ。組織の中で協調性に欠けるとかそういった問題ではなく、日本の農業を守らなければならないという使命感が人一倍、強いように見えた。(P126)

と評されます。鮫島にもグイグイと突っ込むタイプで捜査にもついてくるので、鮫島も捜査がやりにくそうにしていて、読んでいる私も初めは邪魔だなって思います。ただ、どこと無く憎めない性格で、桃井や晶も甲屋のことが気に入っていて、鮫島も、そして読んでいる私もいつの間にか甲屋のことが好きになってしまいます。

 

この甲屋さん、グイグイ行く性格で鮫島を引っ張ることで、物語を進行させるので、まさに「横糸」として、物語を編み上げるといえるでしょう。

 

また、今作のもう一人のゲストキャラが消防士の吾妻です。吾妻は火災現場で火災の原因を究明する「灰かき屋」と呼ばれる職務につく人物で、ある放火事件に疑問を持ち、鮫島に協力を求めます。この「灰かき屋」の話がとても面白かったです。火災の原因の分類の仕方や、放火魔の習性など専門的な話が面白いです。

 

今作の「植物防疫官」「消防士」、前作『無間人形』での「麻薬取締官」など、鮫島と他の分野の専門家(特に公務員)の組み合わせはハマルような気がするので、今後も出てきて欲しいなと思いました。

 

 

多発する事件

今作では、外国人犯罪組織の抗争、連続殺人事件、放火など、いくつもの事件が同時多発的に起きます。織物で言えば縦糸が何本も並行にある状態です。そこに、キャラクターという横糸が通ることで物語が編みあがるのですが、この物語の縦糸である事件も、後半になるとそれぞれが複雑に絡み合ってきます。

 

ある事件の被害者の友人が別の事件の加害者になっていたりと、事件はどんどん錯綜していきます。結局、最後はどうまとまるのか、読んでいていつの間にか目が離せなくなってしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

甲屋のキャラクターのよさや、複雑に絡み合い、目が離せない事件などで、今作はシリーズ屈指のエンターテイメント作品になっていると思うので、おすすめ度は星四つです。

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