おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『浜村渚の計算ノート6さつめ』 青柳碧人 今回も予言が的中

   

書評的な読書感想文144

『浜村渚の計算ノート6さつめ パピルスよ、永遠に』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

青柳碧人(作家別索引

講談社文庫 2015年8月

ミステリー ラノベ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

ほぼワンパターンでマンネリ気味なので、次回作では話が動いてくれることに期待。内容的には、生活に密着したエジプト数字とナポレオンの話が興味深い。また、作中で予言されていることがまたも的中していてすごい。

 

 

あらすじ

浜村渚が罠にはめられた!テロ組織「黒い三角定規」の幹部を追う武藤龍之介と瀬島直樹は、浜村渚を連れて栃木県に向かう。だが、そこには首領アドミラル・ガウスが待ち構えており、三人は囚われの身となってしまう。絶体絶命の中、古代エジプト数学を操る男との知恵比べが始まった!ほか3篇収録。(作品紹介より)

 

 

「浜村渚シリーズ」6さつめだけど第七弾

今好きな作家で打線を組んでみた。」で投手陣の抑えにいる青柳碧人さんの作品。

 

浜村渚の計算ノート』、『浜村渚の計算ノート2さつめ』、『浜村渚の計算ノート3さつめ』、『浜村渚の計算ノート3と½さつめ』『浜村渚の計算ノート4さつめ』『浜村渚の計算ノート5さつめ』の続編です。番外編の『3と½さつめ』をはさんでいるため、『6さつめ』なのに7巻になってます。

 

さすがにここまでくると人物紹介なども詳しくないので、『5さつめ』までは読んでいたほうが楽しめます。

 

 

ちょっとマンネリ気味か

事件が起きるとその影には、黒い三角定規。それが、4話、繰り返されます。このパターンは今までと同じ構造なのですが、全体を貫くテーマというか物語が大きく動く話がなくてちょっとマンネリ気味でした。

 

前作の『5さつめ』で黒い三角定規から追われることになったキューティー・オイラーとの共闘的なこともあるのが、目新しいといえば、目新しいのですが、シリーズ全体の本筋はあまり動いていないように感じました。次回作では話が動いてくれることに期待です。

 

 

エジプト数学とナポレオン

今回、作中で取りあげられている数学は、メルセンヌ素数、ナポレオンと数学、集合、エジプト数学です。個人的に一番興味がわいたのは、エジプト数学でした。

 

例えば、「パン四つを五人で分けるとひとり分はどれだけか?」答えは五分の四です。しかし、エジプト数学ではちょっと違います。独特の法則で答えを出すので、私たちには違和感があるかもしれませんが、その答えを出す概念が面白いです。

「お互いの持っているパンを見て、(中略)確認しあって、誰もズルして多くもらってないし、誰も少なくもらってないし、よし平等だな、ってなったら5人とも納得するでしょ。一人分のもらった量がもともとのパン1個のどれだけかなんて算出して、意味あるー?そんなことして、誰がうれしいのかな?」(P268)

独特の、現代人にはちょっと分かりにくいエジプト数学の計算方法の意味を説明したセリフです。たしかに、生活に密着した数学なら、答えを出すことよりも、正しく分けられることのほうが重要です。

 

これ以外にも『薄さ』を表す単位ペスゥなんかも面白いです。パンやビールに入っている小麦の量を計算するのに使うそうなんですが、当時の生活や税金体系が想像できて面白いです。日本で言えば、米の量の単位である「石」で面積を表す考え方に似ていると思いました。

 

エジプト数学以外では、ナポレオンと数学の話も興味深いです。ナポレオンは数学が得意で、大砲の角度と弾の速さから落下点を暗算で算出できたりしたそうです。戦争に関係ない数学にちゃんと興味があったそうですが。

 

 

またも予言が的中

浜村渚の計算ノート4さつめ』の紹介でも書きましたが、作者の青柳さんは最新の研究にもしっかり目配せをしていて、小説のなか存在をほのめかした未発見の定理や法則が、本が出版した直後に証明されることが何度もありました。

 

今回も予言が的中しています。今回取りあげられているメルセンヌ素数( “メルセンヌ数”. ウィキペディア日本語版. 2016-07-06)は刊行当時(電子版の配信2015年5月、文庫本2015年8月)48個発見されていて、49個目のメルセンヌ素数が作中で取りあげられています。

 

文庫本のあとがきでも「みなさんも49番目のメルセンヌ素数を見つける幸運を狙ってみませんか?」(P360)なんていっていますが、なんとその49番目のメルセンヌ素数は、文庫本発行の一ヵ月後の2015年9月17日に発見されています。これからも青柳さんに数学の未解決問題をバンバン取り上げてもらえば、本が出た直後に解決しそうな気がします。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今作は、個々の話は面白いのですが、シリーズ全体の本筋は動いていないので、ちょっと物足りなさも感じました。次回作では、もっと話が動いてくれることを期待しつつ星三つです。

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