おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『若様組まいる』 畠中恵 前作越え

   

書評的な読書感想文143

『若様組まいる』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

畠中恵(作家別索引

講談社文庫 2013年7月

青春 友情(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

前作より面白い。舞台は明治時代の警察学校。それぞれ立場は違えど、明治に生きようとする若者たちの群像劇。若者たちが反目したり、協力したりする様子が、すっきりとした文章で書かれていて気持ちの良い小説です。

 

 

あらすじ

時は明治二十年――。世が世なら若殿様のはずだった旧幕臣の子息たち、人呼んで「若様組」の面々は、暮らしのため巡査を志し、芝愛宕の教習所に入った。だが、街中でピストル強盗の噂が絶えないなか、教習所内でも銃に絡む謎の事件が勃発。若様組に薩摩組、静岡組、平民組が入り乱れての犯人捜しが始まった!(作品紹介より)

 

 

『アイスクリン強し』の続編で前日譚

以前紹介した『アイスクリン強し』の続編です。ただ、内容は『アイスクリン強し』の前日譚。物語は、長瀬たち若様組が巡査になるときに入った教習所での、2ヶ月の出来事です。

 

『アイスクリン強し』の主人公である真次郎より目立つところがあった長瀬が、今回、主人公になっています。前作のようにスイーツは出てきませんが、青春群像劇としてこちらのほうが面白いです。

 

また、登場人物は共通ですが、内容的にはつながりが薄いので『アイスクリン強し』を読んでいなくても楽しめます。

 

 

若様組以外もいます

そもそも「若様組」とは。元々は江戸時代の幕臣の子息たち。明治維新がなければ若殿様と呼ばれるはずだった若者たちのことです。ただ、明治二十年に二十歳そこそこの彼らは、江戸時代も明治維新も知らずに育ってきています。

 

そんな彼らが今回、巡査を志し教習所に入ることから物語は始まります。何で巡査を志すのか。若様組の面々には江戸時代から代々仕えてくれる家臣がいまだにいるので、何とか身を立て家臣たちを養っていかないといけないと考えます。ただ、武士の考えが身についているので商いはうまく行きそうにない。父親たちと同じ、役人を目指すのか?元幕臣、朝敵なので、風あたりは強く出世は望めない。

 

結局、武士の頃に身につけた読み書きと武術の特技を生かして、巡査を目指すことになります。

 

巡査を目指す者たちが集まる教習所には若様組以外にも、明治維新の勝ち組薩摩出身の薩摩組。徳川家と共に静岡に下った静岡組。比較的裕福な商人の子息である平民組とさまざまな立場の若者がいます。

 

教習所内の力関係は、薩摩組が一番かと思えば、裕福で付け届けができる平民組が優遇されたり、同じ元幕臣でも静岡組は、江戸に残った若様組を裏切り者扱いしたりします。

 

ただ、どの立場の若者たちも、それぞれ事情や葛藤を抱えて、明治に生きようと巡査を志していて、それぞれにちょっと感情移入できる要素があります。青春物にありがちな最後はみんなで協力する展開なのですが、それぞれの事情が読者にも分かっているので、みんながうまくまとまるとうれしくなれました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

明治を生き抜こうとする若者たちの青春が『しゃばけ』の作者らしいすっきりとして、ちょっとコミカルな文章で描かれていて、読んでいてとても気持ちのいい作品です。キャラがちょっと多すぎるのが難ですが、個性的なキャラクターのやりとりも楽しいです。前作より面白いってことで星四つです。

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