おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『白球残映』 赤瀬川隼 野球を見るならオープン戦

   

書評的な読書感想文142

『白球残映』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

赤瀬川隼(作家別索引

文春文庫 1998年5月

スポーツ 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

あらゆる世代の男性が主人公の短編集。メインの野球関連の話よりも、上品で読みやすい文章で描かれる、主人公の失恋や挫折の話が良かったです。さらっとしているのに、切なくてちょっと目頭が熱くなりました。

 

 

あらすじ

白球を追えばよみがえる記憶の数々――。苦しい恋、かなわぬ夢、探し続けた本当の自分。誰しもが抱えもつ魂の壺よ。あるれだす思いよ。あのとき、あのひとは……。端正な文章に深い情感を込めて直木賞に輝く名品のなかの名品です。野球と人生とは、どこか似ている。胸に吹きわたる緑の風をお楽しみください。(作品紹介より)

 

 

直木賞受賞作

以前紹介した『秋日和』の赤瀬川隼さんの直木賞受賞作です。5話からなる短編集ですがその特徴は、作者があとがきで

それは、少年が主人公のもの、青年が主人公のもの、そして壮年、初老と、作品を主人公の年代別に選んで構成してみたいというものがった。(P272)

と述べているように、各年代の男性が主人公になっています。

 

また、短編集のタイトルをつける時は、作品群の中の一つをタイトルにすることが多いのですが、この作品には『白球残映』というタイトルの短編はありません。ただ「白球」とあるように野球がテーマの作品が5話に内、3話あるのでそれも特徴の一つといえます。

 

 

「ほとほと……」

この作品に収録されている五つの短編のうち、三つは野球に関する話でタイトルから推測するに、そちらがメインだとは思いますが、私は野球に関係しない二作品のほうが印象に残りました。

 

「ほとほと……」は私が一番気に入った作品です。主人公は中学三年生の男の子。6っつしか違わない叔母に恋する話です。前半では、姉のようにしたしくしてい叔母に恋する少年の心情が描かれているのですが、後半になると、近しいと思ってた存在の叔母がすごく大人で、ちょっと遠い存在に思えてしまう少年の心情が描かれています。

 

最終的に少年は失恋をするのですが、その強がっている様子が私にも覚えが合ってちょっと目頭が熱くなりました。また、赤瀬川隼さんの文章は『秋日和』の紹介のときにも書きましたが、恋愛の話でも生々しさが無く上品なのが好感の持てます。

 

野球が関係しないもう一つの作品「夜行列車」は、戦後からしばらくたった東京が舞台で、貧しさのために大学進学を諦めていったん就職した青年が、もう一度大学受験に挑戦します。

 

主人公の葛藤と、当時の大学生の描写が特に面白かったです。

 

 

野球を見るならオープン戦

野球に関連した三つの作品は30代、40代、50代の男性がどう前向きに生きるかがテーマのように思われます。私は原則、明るい話のほうが好きなのですが、今回は、前向きなこの三つの作品よりも、挫折がつきまとうちょっと暗い話の、上二つのほうが印象に残りました。

 

ただ、ちょっと気になったのは、この三つの物語の舞台がオープン戦であること。そのことに関して作中で

それからオープン戦は、チームの勝敗の帰趨にあまりこだわらなくてよく、その分、個々のプレーの成功や失敗を愉しめる。ベンチの監督やコーチも、ペナントレースほどいちいち細かいサインでプレーヤーを拘束しないから、ゲーム運びもおおらかな感じがする。(P168)

 

「(管理人註:ペナントレースを見ない理由について)いや、わたしのようなオールドマンは、あの外野席のブンチャカブンチャカやテーマソングといったものが苦手でね、ボールの音が聞こえない。野球独特の静かな間合いが味わえない。そう、野球の気配が薄れるんです。何というか、田園的な開放感がないでしょ」

「同感です。だからわたしも、春先のローカルでのオープン戦が好きなんです」(P252)

と語られています。おそらくは、作者の好みなんでしょうが、ちょっとオープン戦なら行ってもいいかなと思いました。季節的に無理ですが、、、。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

野球パートの部分は、たぶん野球をまったく知らな人は楽しめないと思います。そもそもオープン戦って何だよって。なので、野球がわからない人にはおすすめできませんので、野球がわかる人限定で、星三つです。

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