おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『あるキング 完全版』 伊坂幸太郎 単行本版推し

   

書評的な読書感想文138

『あるキング 完全版』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

伊坂幸太郎(作家別索引

新潮文庫 2015年5月

スポーツ 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

単体で楽しむのと、三つ比べて楽しめる作品。私は単体としてはそれなりに楽しめましたが、三つ並べても、それなりに違いはありましたが、だからなに?という印象でした。単行本版だけ読めばいいのかなって思います。

 

 

あらすじ

山田王求。プロ野球チーム「仙醍キングス」を愛してやまない両親に育てられた彼は、超人的才能を生かし野球選手となる。本当の「天才」が現れたとき、人は“それ”をどう受け取るのか――。群像劇の手法で王を描いた雑誌版。シェイクスピアを軸に寓話的色彩を強めた単行本版。伊坂ユーモアたっぷりの文庫版。同じ物語でありながら、異なる読み味の三篇すべてを収録した「完全版」。 (作品紹介より)

 

 

同じ物語を三回繰り返す

野球に関して超人的な才能を持ったひとりの男の人生を伝記的に描いた物語。特徴的なのは、同じストーリーを異なった語り口で三回繰り返していることです。雑誌掲載時版、単行本版、文庫本版、三パターンをひとまとめにしたので「完全版」となっています。

 

このことについて作者は

「ストーリーは同じでも、書き方によって小説は変わる」とも伝えたいので(P768)

と言っているように、それぞれで受ける印象はそれなりに違いましたし、作家の推敲の過程が見えてちょっと興味深いのですが、三作品をじっくり細かく見比べるわけでもないので、だからなに?という印象も受けました。伊坂さんの作品をいろいろ読み込んでいる人だと、もっと別の感想になるのかもしれませんが。

 

個人的には、終止、不穏な空気が漂っていて、寓話的な側面が強い、単行本版が一番面白かったです。

 

 

寓話的な楽しみ方

超人的な野球の際のを持つ主人公に対し、

「この子(管理人註:主人公のこと)は、フェアに生きる」

「そううまくいくだろうか」「まわりがフェアに扱ってくれるだろうか」「いや無理だ」(P42)

 

「真の王は、舗装された道を歩むべきではありません。そう思いませんか」(P138)

と意味深なことが書かれていたり、主人公の両親がエキセントリックに描かれていたりと、寓話的な要素が見られます。

 

また、ちょっとネタバレになるかもしれませんが、犯罪に対する社会の目というテーマも物語の中にはあったりします。作者自身が、「あらすじ的には大きな盛り上がりがなくても」(P765)なんていってますが、人それぞれ受け取り方は違うと思いますが、寓話的に楽しめます。

 

ちなみに私は、自分がちんけな凡人であると気づかされました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

250ページのボリュームの話を、語り口を変え、うける印象が変わっているとはいえ、同じストーリーで三回読むのは結構しんどかったです。なので、伊坂さんのファンの人以外は、単行本版、もしくは文庫版を一作を読めばいいかなと思います。個人的にお勧めは単行本版。シェイクスピアの『マクベス』に強い影響を受けている文庫版は、『マクベス』を読んだことがある人にはおすすめです。逆に、伊坂さんファンは、伊坂さんの推敲の過程を知ることができるので、三つとも読んでも楽しめると思います。

 

結局、この「完全版」はちょっと万人向けでじゃないのかなってことで、星三つ止まりです。

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