おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『一瞬の風になれ 第一部』 佐藤多佳子 次への布石

   

書評的な読書感想文135

『一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

佐藤多佳子(作家別索引

講談社文庫 2009年7月

青春 スポーツ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

高校の陸上部が舞台の爽やか青春物。自分の才能に対するあきらめや、才能があるのに練習嫌いなチームメイトに対する嫉妬や反発に共感できました。今回は大きな盛り上がりはありませんが、次回作以降に期待です。

 

 

あらすじ

春野台高校陸上部、一年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第一部、スタート!(作品紹介より)

 

 

舞台は陸上部

主人公の神谷新二は中学時代はサッカーをがんばっていました。ただ、全国レベルの強豪高校のサッカー部で活躍する兄に比べ、才能がないことに気づき高校では陸上を選びます。

 

同じ陸上部には、新二の幼馴染の連がいます。連は中二でスプリントの100mの全国大会に出場したにもかかわらず、三年で部活をやめていましたが、高校では、新二に引きづられるかたちで陸上部に入りました。連は天才スプリンターですが、マイペースで練習嫌いです。

 

二人が入った陸上部は強豪ではないけどがんばっている公立の運動部といった感じで、そういった雰囲気がうまく表現されています。私は結構一生懸命部活を(バレー部でした)がんばっていたので「あるある」と思えるエピソードが結構ありました。また、部活をやったことがない人も運動部の雰囲気を楽しめると思います。

 

物語は陸上部を舞台にして、新二と連が成長していく爽やかな青春物です。

 

 

主人公に共感できます

主人公の新二は強豪サッカー部で活躍する兄と比べ自身が持てずにサッカーを諦めます。陸上部では天才スプリンターの幼馴染になかなかかないません。二人に対して結構強めにコンプレックスを感じていて

(サッカーを諦めたことを新二の兄の健ちゃんに)許されたというより、あきらめてもらったというより、用無しになったという気がした。健ちゃんと無関係な人間になっちまった気がして、心身が寒くなった。(P61)

とか

天才なんてそんじょそこらにいるはずのないヤツが、なんで俺の身近に二人もいるんだろう。(中略)俺は天才のあとを追うという悲劇の星の下にでも生まれているのか。(P85)

とか考えています。ただ、その中でも、自分なりにサッカーや陸上に打ち込み、サボりがちな連を叱り飛ばしたりもしています。

 

この、コンプレックスを感じつつも、一生懸命部活に打ち込む主人公の心情が丁寧に描かれていて、結構共感できました。部活に限らず能力があるのにいい加減なヤツって腹立ちますよね。主人公は前向きな男の子なので、コンプレックスに凝り固ることは無く、爽やかなテイストは失われないのもポイントが高いです。

 

 

物語は三部作

三部作といっても、良くありがちな初めの一作目が成功したので次を書いてみた的な三部作ではなく、初めから計算して三部にした作品だからなのか、この一作目は大きな盛り上がりには欠けます。物語の山場である、新二と連が出場する100m×4のリレーの描写も、わりとあっさりしてます。

 

ただ、これから盛り上がるであろう要素は随所に見られました。例えば、大のサッカー好きで兄の健ちゃんを中心に回っている新二の家族と新二の関係。新二は連に勝てるのか、連はまじめに陸上に打ち込むことになるのか。新二の恋の行方は。

 

物語の種はこの第一部でたくさん植えられたと思うので、どう育つのかは次回以降に期待です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

登場人物の顔見せと、今後の物語の布石が目的の巻なので、大きな盛り上がりには欠けましたが、次回以降に期待ということで、様子見の星三つです。

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