おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『梟の城』 司馬遼太郎 忍の生きざま

   

書評的な読書感想文134

『梟の城』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

司馬遼太郎(作家別索引

新潮文庫 1965年4月

時代 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

裏切り裏切られる忍者たちの生きざまや葛藤がカッコいいけど人間臭くて、面白い。無名の忍者たちの人間関係の輪の外にいる、歴史上の人物たちも興味深いです。また、最後のオチが予想外で秀逸でした。

 

 

あらすじ

織田信長によって一族を惨殺された怨念と、忍者としての生きがいをかけて豊臣秀吉暗殺をねらう伊賀者、葛籠重蔵。その相弟子で、忍者の道を捨てて仕官し、伊賀を売り、重蔵を捕らえることに出世の方途を求める風間五平。戦国末期の権力争いを背景に、二人の伊賀者の対照的な生きざまを通して、かげろうのごとき忍者の実像を活写し、歴史小説に新しい時代を画した直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

山田風太郎忍者との対比

『燃えよ剣』や『坂の上の雲』で有名な司馬遼太郎さんの直木賞受賞作。

 

物語は、復讐心と忍者としての美学で豊臣秀吉暗殺をもくろむ葛籠重蔵と忍者を捨て武士として生きようとする風間五平の二人の生き様を中心に進みます。

 

忍者小説といえばこのブログでも紹介したことのある山田風太郎さんを思い浮かべますが、この作品は山田忍者ような、超能力じみた忍法はほぼ出てきません。基本的は高い身体能力を持っているだけで、人間離れしていないリアリティーのある忍者です。

 

物語の内容も、山田作品が、かなりの分量を戦闘シーンに割いているのに対し、司馬忍者は敵味方の人間関係や、忍者としての生き方に対する葛藤などに重きを置いています。

 

ただ、どちらも面白いの読み比べてみるのも楽しいかもしれません。

 

 

無名の忍者たちの生き様

物語の舞台は戦国末期。関が原の合戦の数年前のこと。主人公の葛籠重蔵とライバルの風間五平の生きざまが物語の中心です。そもそも忍者とは本文に

「すべての人間に備えられた快楽の働きを自ら封じ、自ら否み、色身を自虐し、自虐しつくしたはてに、陰湿な精神の性戯、忍びのみがもつ孤独な陶酔をなめずろうとする、いわば外道の苦行僧に似ていた。」(P44)

とあるように、きわめて過酷な生き方です。なので、個人的には過酷な忍者の生きかたを捨て、武士として出世を目指す風間に共感しました。

 

ただ、主人公の葛籠も忍者として生きることに没頭できるわけではなく、謎のくノ一に惚れてしまい、目的を見失うことも。風間にしても、許婚の登場で生きかたに迷ったり、手柄争いのライバルが出てきたりします。

 

二人の忍者の対照的な生きかたを描いていますが、二人は葛藤したり、迷いつつ自分の目的に近づきます。その間には裏切り裏切られの忍者らしい薄情な人間関係も。そんな二人の人間ドラマが物語の最大の見所です。

 

 

歴史上の人物の人間関係

物語には豊臣秀吉を初め、堺の豪商・今井宗久、京都奉行・前田玄以、石田光成など歴史上の人物も多数出てきます。

 

この歴史上の人物たちの立ち位置が、忍者たちの生きかたにも影響をあたえます。秀吉暗殺を葛籠に依頼する今井宗久とそれを阻止するのが仕事の前田玄以。秀吉の懐刀、石田光成も参戦します。

 

ただ、当人が置かれている立場と、心の中で考えていることが別の人物もいたりして、中々複雑な人間関係になっています。史実と照らし合わせつつ、歴史上の人物の意外な心情が描かれているのも、この物語の見所です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

偉大な作家であることだけは知っていましたが、読んだことのなかった司馬遼太郎さん。とても読みやすく、複雑に絡まった人間関係の妙は十分楽しめました。しかも、最後のオチが意外な歴史的事実を絡めた、意外なオチで驚かされました。

 

司馬さん他の名作も読んでみたいってことで、星四つです。

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