おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『聖女の救済』 東野圭吾 『容疑者Xの献身』より好きです

   

書評的な読書感想文131

『聖女の救済』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

東野圭吾(作家別索引

文春文庫 2012年4月

ミステリー 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

『容疑者Xの献身』の方がドラマチックかもしれませんが、私はこちらの方が好きです。トリック自体に犯人の思いがあるのと、可能性を消去して真相にたどり着く推理が秀逸です。何ともやるせない結末も良いです。

 

 

あらすじ

資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが……。驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作。(作品紹介より)

 

 

ガリレオシリーズの傑作

以前紹介した『容疑者Xの献身』と同じ湯川学が主人公のガリレオシリーズです。ガリレオシリーズの作品同士でつながりは少ないので、この作品から読んでも楽しめます。

 

ガリレオシリーズのみならず、東野圭吾さんの代表作といえば『容疑者Xの献身』だと思います。驚愕のトリックとその背景にある犯人のドラマはまさに傑作だとは思いますが、私は『聖女の救済』の方が好きです。

 

 

トリックにこめられた思い

物語の冒頭で犯人が明かされます。死因は毒殺。問題になるのは、毒を被害者に飲ませる方法。犯人には犯行時刻に鉄壁のアリバイがあります。

 

絶対に不可能に思える犯行をガリレオこと湯川学が解決するのはいつものパターンですが、この作品ですごいのがそのトリック。ネタバレにならないぎりぎりのラインで、湯川がトリックに気づいたところを引用します。

「今日、君が帰った後も、あれこれと考えてみた。真柴夫人が毒を入れたと仮定して、どういう方法を用いたのかをね。だけどどうしてもわからない。僕が出した結論は、この方程式に解はない、というものだった。ただ一つを除いてね。」

「ただ一つ?じゃあ、あるんじゃないですか」

「ただし、虚数解だ」

「虚数解?」

「理論的には考えられるが、現実にはありえない、という意味だ。北海道にいる夫人が東京にいる夫に毒を飲ませる方法が一つだけある。だけどそれを実行した可能性は、限りなくゼロに近い。わかるかい?トリックは可能だが、実行することは不可能だということなんだ。」(P287)

虚数解が現実に表れる時に、秘められた犯人の魂の叫びも同時に表れます。トリックがただのトリックではなく、犯人の思いも込められているので、わたしはこの作品が好きです。

 

 

不可能の証明

ガリレオシリーズの探偵役の湯川学は大学で物理学を教えている准教授で、いわゆる理系探偵という意味で、以前紹介した『すべてがFになる』とつながるところがあります。

 

どちらも、与えられた条件での可能性を考えるところが理系なのかなと思います(条件をひっくり返すような、推理をするわけではないということ)。上で引用した会話の後に、

「答えがないことを証明することも大切だ」(P287)

と湯川が発言してますが、こういった考え方が個人的には好みです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今作のワトソン役は、普段のガリレオシリーズと違い、内海刑事が担っています。普段ワトソン役をする草薙刑事が容疑者に恋心を抱いてしまったためです。この役割の入れ替わりが後半効いてきて、物語の結末をちょっと切ないものにします。

 

犯人の思いがこめられたトリック、理系的な推理、切ない結末。何度も言いますが『容疑者Xの献身』よりこちらの方が好きってことで、星五つです。

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