『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』 山田詠美 心はシスター
書評的な読書感想文130
『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』(文庫)
おすすめ度☆☆(星数別索引&説明)
山田詠美(作家別索引)
角川文庫 1987年11月
恋愛 青春(ジャンル別索引)
おすすめポイントを百文字で
透明感のある文章でサラリと恋愛を書いてあり、妖艶なのに生々しくないのが白眉です。ただ、
あらすじ
ソウルミュージックナンバーをバックに奏でられる、
甘く哀しく美しい8つの恋物語。今、いちばん鮮烈で、 輝かしい詠美文学の代表作!言語の感性は天賦のもの─陳舜臣。 天性の才能と肯定的で力のある文章─藤沢周平。 サガンを抜く女流の出現─田辺聖子。小説の本道─井上ひさし。 文章に潔さ、小気味よさ─山口瞳。空前の才能─五木寛之。── 等々、各選考委員の大絶賛をあびた、直木賞受賞作。 解説は村上龍。(作品紹介より)
言葉の選び方が秀逸
物語は黒人の男性の恋愛を描いた八つの短編からなっています。この物語の何よりの特徴は言葉の選び方かなって思います。
彼はアイダが他の男を部屋に呼んでも決して腹を立てなかった。というより、腹を立て、理性を失うことを極端に恐れていた。彼女が、男との情事を楽しんだ後、その男を見送るためにドアを開けると、そこにはメッセージが差し込まれていた。
オレの時より、少し声が小さかったようだぜ。小さな紙切れにはそう書かれていた。それを見た男たちは二度と彼女の部屋を訪れなかった。SHITと彼女は舌打ちをしながらも安らかな気持ちになり、悪くないわと呟いた。(P23)
オシャレで、透明感があって、エロティックだけど生々しくない文章で、大人の恋愛が描かれています。もうひとつだけ
「あいつを見ているとよお、何もかもが可愛くてどうしようもない気分になってくるんだ。いくらファックしたってしきれない。オレの気持ちをあいつに伝えるには、あいつを骨ごとばりばり食っちまうしかねえような気がするんだ。でも、そうするとあいつは目の前から消えちまうし。ああ、本当に困ったもんだぜ」(P169)
私がずれているのか?
作品紹介を読むと大絶賛させているようですが、私はそこまで面白いとは思いませんでした。
私が恋愛に疎い野暮だからでしょうか?30年前の作品だからでしょうか?各短編のタイトルになっている曲を知らないからでしょうか?どれも正解だとは思います。
また、あとがきで作者は自分のことを「私の心はいつだって黒人女(シスター)だよ。日本語をきれいに扱える黒人女(シスター)は世の中でわたしだけなんだ。(P216)」と言っているように、物語は黒人らしき男女が主人公の話です。当然、物語の背景には黒人社会があるのですが、それに私がいまいちなじめなかったのもひとつの原因かもしれません。
書評的な読書感想文のまとめ
言葉選びが秀逸な、黒人社会の粋(クール)な恋愛を描いた上質の翻訳小説(作者は日本人で翻訳小説ではありませんが)といった様相の今作。残念ながら私にはあわなかったってことで、星二つ。
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