おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『星間商事株式会社社史編纂室』 三浦しをん 作中作が面白い

   

書評的な読書感想文126

『星間商事株式会社社史編纂室』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

三浦しをん(作家別索引

ちくま文庫 2014年3月

ミステリー お仕事(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

同人誌の女性サークルの面々が、仕事や結婚、家事とサークル活動との折り合いに悩む様子が見所。作中で書かれている同人誌も面白いです。本筋の社史編纂はミステリー調で物語を読み進める推進力にはなります。

 

 

あらすじ

川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。(作品紹介より)

 

 

本筋はミステリー調

毎度同じみ「好きな作家で打線を組んでみた。」六番に入っている三浦しをんさんの作品。

 

物語の本筋は、ダメ社員が集められた社史編纂室で社史を製作していたところ、ある日脅迫めいたはがきが届き、そこから星間商事の秘密が明らかになっていくという話。

 

全体的にコメディー調な内容のせいか、緊迫感があまりなくいまいち盛り上がりに欠けますが、星間商事の秘密が徐々に明らかになる展開で、物語を読み進める推進力にはなりました。

 

 

本命は同人誌サークル

個人的には、社史編纂の本筋よりも、主人公の幸代が入っている(男性同士の恋愛を主に描いている)同人誌サークルの女性達の葛藤が印象に残りました。

 

男性同士の恋愛、というかセックスを描いたマンガや小説の創作をしていることを、旦那や彼氏に教えるのか。仕事との折り合いはどうするのか。小さい子供の前で男性同士のセックスを描いた漫画を書くのはいかがなものか、などなど、いわゆる腐女子とよばれる、オタク女性の葛藤が描かれています。

 

以前紹介した『夢のような幸福、他エッセイシリーズ 』などのなかで、三浦さん自身が腐女子であることをおっしゃられていますが、自身が経験したことなのか、ものすごくリアリティーがあって、同人誌を書いたことのないわたしでも妙に共感してしまいました。

 

また、作中で主人公の幸代が同人誌で発表している作品が小説内小説として載っています。中年男性と若い男性の恋愛という、いままで読んだことのないジャンル、というか今後も読む機会のない小説ですが、これがちょっと面白かったです。作中で途切れ途切れに小出しにされるのですが、いいところで話が切れていて、続きが気になってしまいました。

 

そこまで直截な表現はないので、この手の小説が気になる人は興味本位で読んでみてもいいかもしれません。

 

 

作者の慧眼

作中で登場人物の口を使って語られますが、おそらく上に上げたエッセイなどを読むかぎりでは、三浦さん自身の考えを書いているんだなと私が思ったことで、個人的に刺さったところをいくつか挙げます。

女性のオタク文化がメディアで取りあげられるようになり、したり顔で論じるひともいるが、たいていは的はずれだ。自分の金と時間を使って楽しんでいるだけなのだから、そっとしておいてほしい。(P15)

 

「(管理人註:旦那が子育てに)協力的というのが曲者よ」(中略)

「本来なら、自分の子なんだから育児をして当たり前でしょ。『育児に協力的な奥さん』とは言わないのに、『育児に協力的なだんなさん』が褒められるのは変よ」(中略)

「幸代のまわりには、働いている母親も大勢いるでしょ?彼女たちは、『子どもにさびしい思いをさせているんじゃないかと思うと、つらい』っていわない?」(中略)

「だけど男で、『俺が忙しく働いているせいで、子どもにさびしい思いを』なんて言うひと、まあめったにいないはずよ。それぐらい、男のひとにとって子どもって他人事なのよねと、子育て真っ最中の身としては感じられるわけ」(P149、150)

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

本筋の社史編纂と星間商事の秘密に関してはそれほど面白くはありませんが、同人誌サークルの話や「やおい」の作中作は個人的には楽しめました。小説の形を取っていますが、ノリはエッセイに近いものがあるので、三浦さんのエッセイを楽しめる人にはおすすめってことで、星三つです。

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