おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『本所深川ふしぎ草紙』 宮部みゆき 回向院の茂七

      2016/06/20

書評的な読書感想文124

『本所深川ふしぎ草紙』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

レーベル 1995年9月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

喜怒哀楽、人の感情のひだが細やかに描かれているので、読んでいて引き込まれました。特に、感情を表すちょっとした仕草や表現が秀逸です。意外だけど納得できる結末も流石です。宮部時代物の入門編としておすすめ。

 

 

あらすじ

近江屋藤兵衛が殺された。下手人は藤兵衛と折り合いの悪かった娘のお美津だという噂が流れたが……。幼い頃お美津に受けた恩義を忘れず、ほのかな思いを抱き続けた職人がことの真相を探る「片葉の芦」。お嬢さんの恋愛成就の願掛けに丑三つ参りを命ぜられた奉公人の娘おりんの出会った怪異の顛末「送り提灯」など深川七不思議を題材に下町人情の世界を描く7編。宮部ワールド時代小説篇。(作品紹介より)

 

 

本所七不思議と回向院の茂七

物語は七つの短編で構成されていて、それぞれの話は、江戸時代に本所深川で語られていた七不思議が題材になっています。「片葉の芦」、「送り提灯」、「置いてけ堀」など、怪談めいた話を元に、その背後に隠れた人間の喜怒哀楽を描いた人情ミステリーです。

 

そして、物語の主人公は回向院の茂七と呼ばれる岡っ引きです。茂七は以前紹介した『ぼんくら』シリーズに出てくる大親分。『ぼんくら』シリーズでは、高齢のため引退してしまっていますが、今回の物語では五十代の現役バリバリで活躍しています。『ぼんくら』の政五郎の様に(むしろ、政五郎が茂七のように)頭が切れ、人の心がわかる良い親分さんです。

 

 

人の感情のひだ

この物語の肝は何といっても人の感情のひだを細やかに描いているところにあります。ある繁盛している足袋屋の

お店の者たちも気づかない、夫婦二人だけの凄絶な争いのほんの一端を(P254)

描き出したり、

くだらない女の意地の張り合い(P98)

が描かれています。

 

誰が正しく、誰が悪いとはっきりさせることのできない、誰もが持っている感情が元になっている出来事なので、読んでいて引き込まれます。この作品は、宮部さんの初期の作品なのですが、『ぼんくら』シリーズや『おそろし』などの三島変調百物語シリーズの萌芽が見られます。

 

人の感情をこれだけ描けるのは、宮部さんがものすごい観察眼の持ち主だと思うのですが、それがわかる部分を一つ。

大人は、何かはっきりと言いにくいことがあると、それを見えない綿にくるんでから口に出すために、ちょっと考えるのだ。(中略)

大人は、子供の心を傷めないように言いくるめようとするときほど、考えなしでしゃべってるんじゃないかと思うくらい素早く答えてくれるものだ。(P39、40)

こんな微妙な違いに気づけて、それを物語りに取り込める宮部さんのすごさがわかる文かなって思います。

 

 

意外だけど納得できる結末。

物語は七つの短編からなっているのですが、どの話もミステリー仕立てになっています。物語の真相はハッピーエンドではないものが多いのですが、意外だけど納得できる結末でした。

 

何で納得できるのかなって考えると、善人にしろ、悪人にしろ登場人物が持っている感情を、私自身も心片隅に持っているので、納得ができるのかなとお思いました。

 

なので、思って見ない結末で驚かされることあっても、真相を知ってしまえば納得できました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

宮部さんの初期に時代物で短編ですが、そのなかには以前紹介した『ぼんくら』シリーズや『おそろし』などの三島変調百物語シリーズなどの長編シリーズの萌芽を感じることができます。一方で、短編なので気軽に読みやすいので宮部さんの時代物の入門編としておすすめってことで、星四つです。

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