おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『死体は語る』 上野正彦 監察医ってやっぱりすごい

   

書評的な読書感想文119

『死体は語る』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

上野正彦(作家別索引

文春文庫 2001年10月

ノンフィクション お仕事(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

変死体のプロ、監察医が出会った事件をまとめたもの。かなり古いのですが、十分面白いし、ためになる。ミステリー小説も顔負けの事件や、なんともやるせない話、ついつい笑ってしまうものまで変死体のお話です。

 

 

あらすじ

偽装殺人、他殺を装った自殺……。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。(作品紹介より)

 

 

監察医上野正彦

以前紹介した『上野正彦の「死体学」ノート』の上野さんのデビュー作にして代表作です。今作は上野さんが監察医時代に出会った出来事をつづった話。状況的には自殺に見えるけど、実は他殺でしたといった監察医のすごさがわかる内容になってます。

 

ちなみに監察医とは、病死と明らかな他殺以外の理由で亡くなった人の死因を特定する仕事です。事故や自殺、自宅での病死が対象になります。

 

 

ミステリー小説顔負けの事件

いまでこそDNA鑑定で親子関係の有無がはっきりと分かりますが、昔は血液型などで鑑定するしかなかったそうです。ありえない血液型組み合わせであれば親子関係は否定できますが、、、。

 

ある男性が電車に飛び込み自殺をしました。葬式には愛人とその子どもを名乗る親子が尋ねてきます。納得できない妻は、子どもが本当に自殺した男性の子ともかを裁判で争うことに。

 

妻側は、男性は無精子症なので子どもはできないと主張。しかし、カルテが残ってない上に、無精子症でもごくわずかながら、子どもができることが医師の証言でわかります。

 

一方、愛人側は男性の直筆の現金書留を提出します。男が生前、生活費を送っていたものです。この現金書留の存在で、愛人の子どもは男性の子と認められそうになりますが、裁判は一転、親子関係を否定します。ある決定的証拠があったおかげで、親子関係がないことが証明されます。

 

推理小説も顔負けのスリリングな展開と、意外な証拠が出てきて(情報は上の文章に載ってます)のどんでん返しと、ミステリー小説も顔負けの展開が面白いです。

 

 

他にもいろいろ

上野さんは監察医として2万件以上の変死体にかかわったそうで、面白い話はまだまだあります。

 

気が向くと廃品回収をして、それ以外は掘っ立て小屋で焼酎を飲んで暮らしていた六十過ぎの男性、池さん。何日も顔を見せないので、近所の住人が小屋を除いてみると

口や鼻の周りには無数のウジ虫がうごめていているが、額から眉にかけてわずかに池さんの面影を残している。右頬から右顎にかけては、白い下顎骨が露出し、顔貌は腐敗も加わって仁王様のような恐ろしさである。(中略)

肌寒い季節であったから、汚れたジャケットを重ねてきているが、下半身はなぜか裸である。またを少し広げ、陰部はほぼ逆三角形にえぐり取られたように、陰茎も陰ノウモ睾丸もなくなっている。(P21)

猟奇殺人かとざわめくが、真相は意外なことに。不謹慎だけど笑ってしまい、ついでちょっと物悲しくなってしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

上野正彦の「死体学」ノート』を紹介したときに、具体例が少ないのが難だと書きましたが、今作は具体例が豊富です。単行本の初版は1989年で、実際に事件に出会った年代はもっと古いでしょう。なので、内容的にはかなり古いのですが(親子関係の鑑定が血液型だよりとか)、十分面白いし、ためになります。

 

監察医を目指す人が読むようなものではないでしょうが、ミステリー好きや警察小説が好きな人にはおすすめってことで、星四つです。

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