おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『感染遊戯』 誉田哲也 姫川シリーズスピンオフ

   

書評的な読書感想文116

『感染遊戯』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

誉田哲也(作家別索引

光文社文庫 2013年11月

警察 サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

姫川シリーズのスピンオフ。主役の「ガンテツ」がいい感じで下衆で、下衆であればあるほど物語のテーマが浮かび、何が正義で何が悪か分からなくなります。短編三つが、最後の中編で一気に収束する構成も面白い。

 

 

あらすじ

会社役員刺殺事件を追う姫川玲子に、ガンテツこと勝俣警部補が十五年前の事件を語り始める。刺された会社役員は薬害を蔓延させた元厚生官僚で、その息子もかつて殺害されていたというのだ。さらに、元刑事の倉田と姫川の元部下・葉山が関わった事案も、被害者は官僚―。バラバラに見えた事件が一つに繋がるとき、戦慄の真相が立ち現れる!姫川玲子シリーズ最大の問題作。(作品紹介より)

 

 

姫川シリーズ第五弾でスピンオフ

以前紹介した『ストロベリーナイト』、『ソウルケイジ』、『シンメトリー』、『インビジブルレイン』とシリーズ化している、姫川玲子を主人公とした刑事小説の続編です。

 

今回は三つの短編と一つの中篇で構成されたスピンオフ作品で、主人公は『ストロベリーナイト』に出てきた悪徳警官ガンテツと『シンメトリー』に出てきた元刑事の倉田、姫川の部下だった葉山です。

 

なので、今作はいままでの四作を読んだ上でないと楽しめないと思います。

 

 

悪徳警官ガンテツ

短編一つと、最後の中編の主人公なのがあくと警官ガンテツ。『ストロベリーナイト』を紹介したときに、手柄を得るために裏金をばら撒いたり、自分が担当じゃない関係者に強引に話を聞いたりと悪徳警官という言葉ぴったりと書きましたが、今回も悪徳っぷり健在です。

 

弱みを握っているハッカーに警視庁のデーターベースをハッキングさせデータを手に入れたり、恐喝なんかもしています。今回はガンテツが主人公なので当然ガンテツの心情も描かれていますが、まあ、下衆です。情報小出しにしようとする姫川に対して

「先っぽだけよ、ってか……相変わらずケチ臭い女だなオメエは。いいから開け。おっぴろげて、さっさと見せろって」(P11)

なんていったりしてます。

 

ただ、ガンテツが下衆であればあるほど、今回のテーマが際立つのかなと思いました。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、何が善で何が悪か。倫理的な善悪、法律的な善悪、いろいろごちゃ混ぜになってるのが今回のテーマなので、警察という正義のなかの悪徳警官というガンテツは面白い存在になってます。

 

悪徳で下衆ですが、最後はちょっとガンテツが好きになってしまいました。

 

 

全体で一つの長編

前半の三つの短編が最後の中編で収束して、全体として一つの長編のようになっています。なので、前半は単なるスピンオフの短編だと思って、のんびり楽しんでいたのですが、最後の中編で一気にのめり込んでしまいました。

 

タイトルの『感染遊戯』(おそらく今回はスピンオフということで漢字を使っている)は一番最初の短編のタイトルです。以降『連鎖誘導』『沈黙怨嗟』『推定有罪』と続きますが、このタイトルの意味も物語を読み進めて全体像が見えてくるとわかる、にくい演出になってます。

 

 

次回作にも期待

『インビジブルレイン』で解体された捜査一課姫川班ですが、今作はその二年半後の物語になってます。その時点で、姫川は捜査一課に復帰しているようです。元部下が久々に姫川に会った印象をこう述べています

一種の明るさというか、以前は見られなかった強さというようなものを、いま目の前にいる姫川からは感じる。だがそれがいいことなのか悪いことなのかは、葉山には分からない。女性を庇護の対象と見るタイプの男性には、ひょっとしたら魅力が半減したように感じられるかもしれない。ただ、彼女を自立した一人の人間として見れば、その輝きは増したようにも映る。(P208)

何があったのでしょう。すでに発売されている次回作には、おそらくその辺のことも書いてあると思うので期待です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今回はスピンオフということで主人公が変わっていますし、姫川自体が少し出てきません。けど、シリーズに共通する読みやすさと社会性はそのままで(グロいシーンは今回はゼロ)、変わり者の主人公たちが楽しめます

 

スピンオフですが、本編と同レベルで面白いって事で星四つです。

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