おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『一夢庵風流記』 隆慶一郎 『花の慶次』の原作

   

書評的な読書感想文115

『一夢庵風流記』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

隆慶一郎(作家別索引

新潮文庫 1991年3月

時代 友情(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

漫画『花の慶次』の原作本。戦国時代のかぶき者の生き様が描かれます。秀吉の前や微妙な情勢の朝鮮半島など、いつ何時でも自由に振る舞う姿は痛快です。一方で友のために死を賭けるシーンでは目頭が熱くなりました。

 

 

あらすじ

戦国末期、天下の傾奇者(かぶきもの)として知られる男がいた。派手な格好と異様な振る舞いで人を驚かすのを愉しむ男、名は前田慶次郎という。巨躯巨漢で、一度合戦になるや、朱色の長槍を振り回し、敵陣に一人斬り込んでいく剛毅ないくさ人であり、当代一流の風流人でもあった。そして何より、自由を愛するさすらい人でもあった。故あって、妻子を置き旅に出た男の奔放苛烈な生き方を描く時代長編。(作品紹介より)

 

 

漫画『花の慶次』の原作本

「今好きな作家で打線を組んでみた。」で八番に入っている隆慶一郎さんの作品。隆さんの作品で一番最初に読んだのがこの作品。きっかけは、この作品が原作になっている漫画『花の慶次-雲のかなたに- (Amazoneのページへ)』を読んで面白かったからです。

 

『花の慶次~雲のかなたに~』は1990年~1993年に「週間少年ジャンプ」で連載されたマンガで、パチンコになったり、いまだにスピンオフ作品が連載されていたりと、人気のマンガです。

 

私も大好きなマンガでコミックスを集めていました。それが縁で原作も読んでみようとしたのが一番初めです。

 

二つの作品を比べてみると、骨組みや物語のテーマは同じですが、マンガにする際にエピソードを削ったり、組み替えたり、オリジナルを加えたりと肉付けはだいぶ違っています。原作では利家の妻・まつを抱いていたりします。

 

また、『死ぬことと見つけたり』を紹介したときにも描きましたが、『花の慶次』では隆さんの他の作品のエピソードも使っているので、隆さんが好きな方は読んだら楽しめると思います。

 

 

傾奇者・慶次郎

物語の主人公は戦国時代の傾奇者・前田慶次郎が主人公の一代記です。傾奇者とは

異風の姿かたちを好み、異様な振る舞いで人を驚かすのを愛することを『傾く(かぶく)』と云ったのである。(P9)

と作中にあるように『傾く(かぶく)』事を好む者です。一昔前のツッパリなんかは近いのかもしれません。また戦国時代の有名な傾奇者は織田信長を挙げられます。

 

当然彼らは町中でも戦場でも目立ちます。したがって、標的にされます。にもかかわらず、慶次郎は戦場で襲い掛かってくる敵を蹴散らし、目覚しい手柄をいつも上げる武辺者です。

 

一方で、慶次郎は源氏物語や伊勢物語、和歌、漢詩、連歌などもたしなむ当代一流の風流人でもあります。そんな彼が天下人の秀吉や叔父の前田利家や朝鮮半島の人々に対して自由に振舞い、意地を張り通す姿は痛快です。

 

個人的には秀吉と慶次郎の対面の場面が好きです。京都で風流人として、そして当然傾奇者として評判だった慶次郎に興味を持った秀吉が、対面を求めます。秀吉は前田利家に仲介を頼み、妻のまつが慶次郎に秀吉との対面を進めます(慶次郎はまつにほれているので断れない)。

 

ただ、秀吉と慶次郎、傾奇者同士が対面すれば気が合うはずもなく、そうすると秀吉の機嫌をそこね、前田家の存続も危うくなります(断っても秀吉の機嫌を損ねるので同じことになる)。慶次郎は傾奇者として、人として意地を通すために有る決意をして秀吉と対面します。

 

相手が何人であっても意地を通す姿がしびれます。

 

 

莫逆の友・直江兼続

上杉景勝の懐刀で、兜に「愛」の前立てをしていたのでも有名な直江兼続と慶次郎は莫逆の友です。話をしなくても、そばにいるだけで心が満たされる関係の二人ですが、秀吉の死後、上杉家は徳川家康に狙われピンチに陥ります。そんな時、慶次郎は

「直江山城(直江兼続のこと)は莫逆の友。死んでやらねばなりますまい」(P497)

といって、絶体絶命の上杉家を助けに行きます。これ以外にも、友のために命をかけるシーンがいくつかあるのですが、男の友情のかっこよさに目頭が熱くなりました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

前田慶次郎の生き方は絶対にまねはできないのですが、ちょっとあこがれてしまいます。解説で慶次郎のことを

一個の真の男、潔い日本男子。(P559)

と表現していますが、まさにそのとおりだと思います。剣術に関して慶次郎が

「虎や狼が日々練磨などするかね」(P37)

なんてセリフを言っているのもかっこいいです。

 

男らしい男のすがすがしい小説って事で、星四つです。

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