おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ホテルローヤル』 桜木紫乃 ラブホテルの非日常感

   

書評的な読書感想文109

『ホテルローヤル』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

桜木紫乃(作家別索引

集英社文庫 2015年6月

恋愛 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

場末のラブホテルを舞台にした連作短編集。うらぶれた男女の日常と非日常が旨く切り取られています。舞台が舞台なので、結末は明るいものばかりではありませんが、案外小さな希望がともされたりもします。

 

 

あらすじ

北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く―。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昴揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。第149回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

 

ラブホテルが舞台

物語は北海道の釧路にあるラブホテルが舞台です。このラブホテルにかかわる男女(客に限らず)の日常と非日常を切り取った連作短編集になります。

 

主人公の男女がそれぞれ違う短編が全部で7編あるのですが、構成にちょっとひねりが効いていて最初の物語はホテルがつぶれた後の話になっています。そして、物語を読み進めると時間がさかのぼり最後の物語はホテルの経営を始めるときの物語になっています。

 

最初につぶれた状態のホテルの話があるためか、物語全体に寂れた場末のホテルのイメージが漂い、主人公の男女も各々事情を抱えた場末のホテルにふさわしいうらぶれた様子です。

 

 

うらぶれた男女

廃墟になったホテルでヌード写真を撮る男女や貧乏寺を支えるために檀家と肌を合わせる住職の妻の物語など、日常にちょっと事情を抱えた男女の非日常の物語が多いのですが、結末もそんな男女にふさわしいものなっていることが多いです。

 

ただ、かなりネガティブな結末になっているものから、読者に解釈を委ねるもの、比較的希望のある結末までさまざまです。

 

 

「バブルバス」

私が一番気に入った話を紹介します。

 

日々の生活や突然の舅との同居で汲々としてる50前後と思われる夫婦が、二人で墓参り行ったはいいが坊さんがダブルブッキングでこれなってしまった話です。急に出来た時間とお布施と使うはずだった五千円。二人はホテルローヤルに入っていくことに、、、。

 

この話の何が良いかというと、ものすごいリアルな日常感とラブホテルの非日常間の対比が決まっているところです。突然浮いた五千円に対し妻は

この五千円があれば、五日分の食費になる。息子と娘に新しい服の一枚も買ってあげられる。舅に内緒で近所の中華飯店へ行って、家四人で一人千二百円のセットメニューを頼める。一か月分の電気代。あれもこれも。引き換えにできるすべてのことを思い浮かべていた。(P100)

けど、

「いっぺん、思いっきり声を出せるところでやりたいの」(P100)

と、最後は押し切っています。

 

この葛藤が妙にリアルで切なくて、とても気に入りました。この後のホテルに入った非日常の様子や、小さな希望がともされる結末は読んで確かめて欲しいです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

ホテルを舞台にした物語は結構ありますが、ラブホテルが舞台の話は珍しい気がします。作者の父親がラブホテルを経営していたようで作者も手伝いをしていたためか、ラブホテルで起きる高揚した雰囲気やその反動のけだるさなどが冷静な視点で書かれています。

 

上にも書きましたが、基本的には全ての短編が寂れたラブホテルの物語にふさわしい結末ですが、その中でもところどころで小さな希望が見つけられるのが良かったです。他の作品も読みたいなって事で、星三つです。

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