おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『博士の愛した数式』 小川洋子 初代本屋大賞

   

書評的な読書感想文107

『博士の愛した数式』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

小川洋子(作家別索引

レーベル 2005年12月

人間ドラマ 恋愛(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

感動というほど大げさではなく、程よくしっとりとした読後感の作品。作中に数学愛があふれています。また、登場人物三人の間に流れる愛情は、なんて呼べばいいのか分からないけど、とても尊いものに思えました。

 

 

あらすじ

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた―記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。(作品紹介より)

 

 

映画を先に観ました。

十年前に映画が公開されたとき当時、付き合っていた彼女と見に行った作品です。作品を見た直後に小説を読みました。小説を読んで映画を観ることは結構ありますが、映像をちゃんと観てから小説を読むのは私にしては珍しいパターンです。

 

映画はとても良く、今でも結構内容を覚えていました。なので、今回再読した際も、寺尾聰さんと深津絵里さんでばっちり再生されました。

 

原作に忠実ですし、数学部分も映像のほうが文章より分かりやすいので、映画もおすすめです。

あふれる数学愛

物語は80分しか記憶が持たない数学者と家政婦とその息子の三人の交流の物語です。この80分しか記憶がもたないというのが大変で、数学者の博士と(通いの)家政婦・私や戸の息子とは常に初対面として出合うことになります。

 

そんな三人の間を取り持つものの一つは数学です(ちなみにもう一つは阪神タイガースと江夏豊)。なので作中に数学が出てくるのですが、その扱いが愛にあふれています。

 

数学愛にあふれた作品といえば以前紹介した『浜村渚の計算ノート』ですが、『浜村渚の計算ノート』がパズルのような数学問題を多く扱っているのに対し、この作品は博士以外の二人が数学初心者ということもあり、算数に近い数学が取り上げられています。

 

例えば友愛数。二つの自然数が自分自身を除いた約数の和がお互い相手と等しくなる数のことです。

 

10の約数は1、2、5、10で10を除いた和は8になります。8の約数は1、2、4、8で8の除いた和は7でこの二つは友愛数とはいえません。作中では220と284という友愛数が出てきて、この数字が博士と私が仲良くなるきっかけになるのですが、とても数学愛にあふれたエピソードになってます。

 

 

何愛?

物語には数学愛以外にも、愛にあふれています。それは、博士と私と息子(あだ名はルート)の三人の間に流れる愛です。この愛というかある種の感情がこの物語の根底をなすものなのですが、何と呼べばいいか迷ってしまいます。

 

博士は64歳で私は28歳のシングルマザー、息子のルートは10歳。恋愛に近い感情はありますが、恋愛と呼べるほど生々しいものではありません。記憶障害の博士に対する同情や哀れみかといえば、はじめはそうでしたが、そういった感情は後半にはなくなっています。

 

家族愛と人間愛の中間くらいというのが一番しっくり来るかもしれません。ただ、家族のようでそうではない三人の間に流れる感情はとても尊いものに感じました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

「感動作」とか「泣ける」というほど大げさな作品ではありません。泣けるという意味では前回紹介した『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』の方がよほど泣けます(動物と子どもは二大涙腺クラッシャーだと思います)。

 

ただ、この作品は読み終わった時にしっとりとした心地よい感動をを得られます。本を閉じた時に「ほっと」ため息をつき、そして心はじんわりと温まっている、そんな作品は中々ないって事で星四つです。

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