おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『最終便に間に合えば』 林真理子 女性の生の感情

   

書評的な読書感想文103

『最終便に間に合えば』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

林真理子(作家別索引

文春文庫 1988年11月(このブログで使っている画像などは新装版のものです。)

恋愛 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

大人の女性の恋愛を描いた短編集。女性の生の感情、特に自尊心が書かれていて、正直おののきました。それでも、最後まで読んだのは妙に共感できるのと、ギリギリ醜悪にはなっていないからです。他の作品も読みます。

 

 

あらすじ

OLから造花クリエーターに転進した美登里は、旅行先の札幌で7年前に別れた男と再会する。空港へ向うタクシーの中、男は昔のように美登里を誘惑してくるが……。大人の情事を冷めた目で捉えた表題作に、古都を舞台に齢下の男との甘美な恋愛を描いた「京都まで」の直木賞受賞2作品他を収録する充実の短篇集。(作品紹介より)

 

 

直木賞受賞作

直木賞受賞作の「最終便に間に合えば」、「京都まで」の二作をふくむ、5つの短編から収録されています。直木賞作品で気になったのと、関西旅行を計画しているので、「京都まで」で旅行気分を盛り上げようとして手に取りました。

 

残念ながら「京都まで」はあまり京都感がなかったのですが。とりあえず、林真理子さんは初読みです。

 

 

女の生の感情

どの短編も20代、30代の女性が主人公の恋愛ものなのですが、とにかく女性の生の感情がバッチリ描かれていて、正直怖いです。例えば、表題作の「最終便に間に合えば」では、仕事で成功した女が嫌な分かれ方をした男に久々に連絡を取った理由は、

(管理人注:男の存在が心の中で)それがいつのまにか水面に大きく浮き上がってきたのは、やはり美登里の女らしい自己顕示欲によるものであったに違いない。別れた、といえば聞こえがいいが、結局のところ自分に対して強い所有欲を持たなかった男に対して、はるかに美味になった自分を見せたかったのだ。(P15)

 

他にも、ある女性が偶然手に入れた超高級ワインを、価値を理解してありがたがってくれる、なるべく自尊心を満たしてくれる人にあげようとする、「ワイン」など、女性の感情、特に自尊心にが描かれています。

 

恋愛の最中に女の人が何を考えているのか、いままで知らなかった世界がバッチリ書かれているのが、怖いと感じた理由だと思います。

 

ただ、怖いのに読むのをやめなかった理由の一つは、妙に共感できることが多かったことです。偶然手に入れた高級ワインをもったいなく感じ、ワインの価値が分かる人間を求めて右往左往する感じは、そんな経験をしたことないのに共感しました。

 

もう一つの理由は、自尊心をはじめ、嫉妬や独占欲など負の感情も多いのですが、目を背けたくなるほど醜悪にはなっていないからです。

 

微妙に共感してしまい、嫌な感情だなと思いつつも、目を背けるほど醜悪な感じではないので、普段触れない女性の生の感情を怖がりながらも最後まで楽しんで読んでしまいました。

 

 

男性作家には、、、

この物語を読んでいて、「男性作家には女性は書けないけど、女性作家は男性も女性も書ける」といった趣旨の言葉を思い出しました。誰が書いていたのか思い出せませんし、言葉も正確ではないのですが。

 

この物語の女性は恋愛の最中など男と話しているときに、こんなことを考え、感じているんだということがよく分かります。この感じは男性作家には出せないのかなって思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

個人的に気に入ったのは、上にも書いた「ワイン」という短編。たまたま手に入れた高級ワインが急に惜しくなってしまう気持ちに共感できました。また、「エンジェルのペン」では自分が体験したことしか小説に書けない作家が、新たな小説を書くために暴走してしまう話なのですが、これなんかは主人公がちょっと気持ち悪くて共感できないのに、面白い話です。

 

林真理子さんは初読みでしたが、他の作品もぜひ読みたいと思わしてくれたということで、星四つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,