おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ばけもの好む中将弐』 瀬川貴次 カーアクションあります

   

書評的な読書感想文102

『ばけもの好む中将弐 姑獲鳥と牛鬼』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

瀬川貴次(作家別索引

集英社文庫 2014年2月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

古典や現代作品のオマージュ、妖怪のうんちくなど小ネタが楽しいです。しかも、伏線になっているものもあり、最後はやられました。本筋は、平安時代の雰囲気が楽しめ、謎解きやカーアクション?もあったりします。

 

 

あらすじ

怪異大好きの変人中将・宣能に気に入られてしまった青年貴族の宗孝。「泣く石」の噂を確かめに二人で向かった都の外れで出会ったのは、妖怪ではなく何やら訳ありらしい赤子。成り行きで預かる事になった宗孝だが、その子は中将の隠し子かもしれず……。しかも姉たちの追及に対して苦し紛れに自分の子だと答えてしまったため、事態は更にややこしい方向に!?平安怪奇冒険譚、第2弾!(作品紹介より)

 

 

『ばけもの好む中将』シリーズ第二弾。

以前紹介した『ばけもの好む中将』の続編です。内容的につながりは薄いので、この巻から読んでも楽しめます。ただ、いろいろなキャラの成り立ちは一冊目のほうが詳しいので、先に一巻を読んでおくとより楽しめるでしょう。「牛車、爆発しろ」は伏線か?

 

今回の作品も以前紹介した『檸檬』、『プリンセス・トヨトミ』同様、関西旅行に行くための気分を盛り上げるために、京都が舞台の作品を読みたいと思い再読しました。作中に出てくる野宮神社は行こうかなって思ってます。

 

ちなみのこの話、基本的にもののけは出てきません。もちろんそれを退治する陰陽師も。そういった作品を期待していると、肩透かしを食うかもしれません。

 

 

小ネタ祭り

前回の時も書きましたが、今回も古典作品の引用やオマージュがふんだんです。ただ、これは特別なことではなく、古典作品では当たり前のこと。かの有名な『源氏物語』もかぐや姫の『竹取物語』や、平安の恋愛のバイブル『伊勢物語』を引用したり、オマージュしています。

 

今回の作品では、和泉式部の和歌を引用したり『源氏物語』のオマージュなどがあります。和泉式部は恋多き女として知られているのですが、そんな背景も含めてうまく作品に取り込んでいるので、古典好きには楽しめるつくりになってます。

もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づるわが魂(たま)かとぞみる (P54)

 

また、今回は現代作品のオマージュもあります。探偵マンガなどでおなじみのポーズを平安時代の登場人物がやった時には思わずクスリとしました。これ以外にも、キン肉マンの小ネタまであったりします。

 

こういったメタ的な小ネタは、たぶん好き嫌いが分かれるとは思いますが、私は楽しめました。

 

もちろん、「ばけもの好む」なんてタイトルがついているので、もののけのうんちくなどもあります。サブタイトルになっている姑獲鳥(「うぶめ」と読みます)と牛鬼の話など、中々興味深いく、「呪術的逃走」なんていうちょっとアカデミックな話まで出てきます。ちなみに、キン肉マンの小ネタを出してきた理由は、牛鬼がバッファローマンに似ているからだと思ったりしています。

 

ちょっと情報過多かなとも思いますが、いくつかの小ネタは伏線にもなっていて、最後の最後で回収されます。個人的にはちょっとやられたと思いました。

 

 

平安時代の雰囲気と今時の小説っぽさ

主人公達が平安時代のスポーツ・蹴鞠をやっていたり、推理の手がかりが文だったりするなど、随所で平安時代の雰囲気を楽しめます。その一方で謎解きやカーアクション(いや本当に)があったりと今時の小説っぽさもあります。

 

ばけもの好む中将で物語の探偵役でもある宣能の妹にはシナスタジア(共感覚)なる、特殊な知覚現象をもっていて、それが推理の決め手になったりもします。文字に色や動きが見えてしまう感覚で(現実に存在し、学術的な研究もある)、謎解きの手がかりになったりします。

 

シナスタジアなんかはものすごく今時っぽい要素かなと思いますが、実にうまいこと平安時代の話にマッチさせています。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

ちょっと小ネタが情報過多のような気もしますが、平安時代を舞台にしたライトミステリーとして楽しめました。個人的には、平安時代の貴族といえば、恋愛と権力闘争かなと思うのですが、今回は恋愛がメインの話でした。なので、次回は権力闘争の話が見たいなと(今回、その兆候も見えましたし)、期待をこめて星三つです。

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