おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『プラチナデータ』 東野圭吾 こんな捜査は怖い

   

書評的な読書感想文096

『プラチナデータ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

東野圭吾(作家別索引

幻冬舎文庫 2012年7月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

一定の驚きやスリルはありますが、ありがちな設定で「プラチナデータ」の謎も予想できました。東野さんにしては平凡な作品。ただ、何でもデジタル化する世界観での芸術のあり方に対する物語の考え方は面白いです。

 

 

あらすじ

国民の遺伝子情報から犯人を特定するDNA捜査システム。その開発者が殺害された。神楽龍平はシステムを使って犯人を突き止めようとするが、コンピュータが示したのは何と彼の名前だった。革命的システムの裏に隠された陰謀とは?鍵を握るのは謎のプログラムと、もう一人の“彼”。果たして神楽は警察の包囲網をかわし、真相に辿り着けるのか。(作品紹介より)

 

 

DNA捜査システム

物語の中では警察はDNA捜査システムなるものを利用して、犯罪捜査を行っています。DNA捜査システムとはなにかというと、国民に遺伝子情報(DNA)を登録してもらいデータ化します。犯罪が起こった際は現場から採取されたDNAをシステムで検索かけると、登録者の近親者に犯人がいるとすぐに分かるといったシステムです。

 

つまり、犯人は登録者の従兄弟の中の誰か、といったことが分かるシステムです。

 

物語の主人公でこのDNA捜査システムのオペレーターである神楽龍平は、このシステムの開発者が殺害された現場にあった髪の毛を検索しました。結果は犯人は神楽自身であると出ます。

 

 

システムの裏にある陰謀

警察から逃亡しながら事件の真相を解明しようとする神楽。徐々に真実があきならになる過程で、DNA捜査システムの裏にある陰謀が見えてきます。

 

タイトルの『プラチナデータ』の意味もこの陰謀と共に明らかになるのですが、正直の当たりのプロットはありがちかなって思ってしまいます。『プラチナデータ』の意味合いもわりと予想できてしまいましたし。

 

エンタメ小説として読んでいて引き込まれるだけのスリルと驚きはもちろんありますが、(私のイメージする東野さんの中では)比較的平凡な作品かな思ってしまいました。

 

 

シニカルな視点と芸術のデジタル化

物語に時々顔を出すシニカルな視点が好きです。

「(DNA捜査システムについて)国民が許さない?(中略)政治家たちは自分たちの通したい法案を着々と通してく。これまで、ずっとそうだったでしょ。国民の反対なんかは関係ない。それに国民だって、どんな無茶な法案を通されようが、怒ってるのは最初だけで、すぐにその状況に慣れていく。」(P38)

 

「反対勢力が国家の方針を変えた例って、過去にどれだけあります?」(P168)

 

こういったシニカルな視点は、デジタルの対極に位置する芸術の分野にも及びます。

物語の中である犯罪者集団が、コンピュータとロボットアームを使って陶芸品の精巧な模造品を作りました。そして、彼らはコンピュータプログラムを使って、既存の陶芸家が「作りそうな」オリジナル作品を作ることに成功します。

 

本物の陶芸家の未発表作とコンピュータが作り出した作品をごちゃ混ぜにして、専門家に鑑定させたところ、区別できないことが判明してます。作中で

「どんな芸術家作品でもデータ化は可能かもしれない。」(P371)

とありますが、我々の現実世界でも十分起こりうることかなって思いました。

 

物語の中での回答は読んで確かめて欲しいのですが、個人的には作中の芸術に対する考え方は面白いと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

以前紹介した東野さんの作品の『鳥人計画』の時にも書きましたが、私の中で東野さんのハードルは高く設定されてしまっているので、ちょっと辛めの評価です。ただ、エンタメ小説として、普通に面白いって事で、星三つです。

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