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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『トッカン』 高殿円 マルサの女ではない

   

書評的な読書感想文086

『トッカン 特別国税徴収官』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

高殿円(作家別索引

ハヤカワ文庫 2012年5月

お仕事 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

国税徴収官を主人公にした、お仕事系エンタメ小説。新米の女性主人公と、冷徹なエリート男性上司というベタな組合せで展開もベタ。けれど、物語に散らばっている脱税や税法の話が面白い上に、感心してしまいます。

 

 

あらすじ

税金滞納者を取り立てる皆の嫌われ者、徴収官。なかでも特に悪質な事案を扱うのが特別国税徴収官(略してトッカン)である。東京国税局京橋地区税務署に所属する新米徴収官ぐー子は、鬼上司・鏡特官の下、今日も滞納者の取り立てに奔走中。カフェの二重帳簿疑惑や銀座クラブの罠に立ち向かいつつ、人間の生活と欲望に直結した税金について学んでいく。仕事人たちに明日への希望の火を灯す税務署エンタメシリーズ第1弾!(作品紹介より)

 

 

主人公は徴収官

物語の主人公は税務署の徴収官。徴収官とはなんぞやってとこですが、

滞納者からの取立てと、納税相談が主な仕事(P34)

だそうです。

 

税務署というと私が真っ先に思いつくのはマルサの女です。マルサとは国税局の査察部のことで、ようは脱税をしている人を見つけ出し、家宅捜索などで証拠をそろえ訴える仕事です。税金を滞納している人から取り立てをする徴収官とは別物です。

 

そして、この物語の主人公の鈴宮・通称ぐー子は、特に悪質な事案を取り扱う特別国税徴収官(略してトッカン)付き職員です。税金滞納者の元におもむき、容赦なく取立て、金目のものを差し押さえます。公務員でありながら多くの人に忌み嫌われる仕事です。

 

 

ベタなのに面白い

主人公の鈴宮深樹は元気で正義感あるれる新米で、

言いたいことをうまく言葉にできずに、「ぐ」と呑み込んでしまう(P20)

ので「ぐー子」とあだ名されてしまいます。

 

その上司で特別国税徴収官の鏡雅愛は死に神とあだ名される、冷静、冷徹なエリート徴収官。そんな二人がさまざまな場面でぶつかり合いながらも、税金の徴収をしていくのがこの物語。

 

物語としては、まあベタです。正義感あるれる新米が、冷徹なエリート上司に反発し、ミスや挫折も味わいながら成長し、最後はお互い認め合うみたいなストーリーが結構早い段階で読めます。そして、実際そうなります。

 

けれど、面白いです。税金にまつわる話がとても面白いので、物語の筋はあえてベタにしているのかなって思うくらい、面白い税の話がたくさん出てきます。

 

 

S(エス)

差し押さえのことをS(エス)というそうです。悪質な滞納者の財産は容赦なくSします。

国税徴収法は、日本の法律で最高の強権であることを知っている人は少ない。しかし、その実態は驚くものだ。なにせ、裁判所の令状などいらないのだから。問答無用でおしかけていって、金を強奪しても(もちろん、滞納者相手にである)なんの手出しもできない。(P110)

とあるくらいなので、作中でもがんがんSしています。

 

ただ、一方でホステスの着物は仕事で必要なものなのでSできません。税金を滞納しつつも、高価な着物を買いあさっているホステスは野放しだったりします。

 

これ以外にも、宗教関係のものも手出しづらく、金でできた仏像なんかもSできないそうです。

 

こういった感じで、税にまつわる面白い話が随所にあるので、ベタな展開でも楽しめます。とある、個人経営の喫茶店の脱税方法を見抜く話は、ちょっとしたミステリーといえるかもしれません。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

脱税の手口や税に関するトリビア的なもの以外にも、税を納める理由や働く意味などちょっと考えさせられる話もちょいちょいあります。面白い、ためになる、考えさせられる、その上笑えて、泣ける、この物語。シリーズを追いかける価値十分にありって事で、星四つです。

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