おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ばけもの好む中将』 瀬川貴次 牛車、爆発しろ

   

書評的な読書感想文082

『ばけもの好む中将 平安不思議めぐり』(文庫)

おすすめ度☆☆☆星数別索引&説明

瀬川貴次(作家別索引

集英社文庫 2013年4月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

怪異の噂を検証し、裏にある真実を暴くミステリー仕立ての物語。平安時代の雰囲気を表現しつつも、個性的なキャラと読みやすい文章を楽しめます。また、所々にある古典作品のオマージュにニヤリとしてしまいます。

 

 

あらすじ

十二人の姉が居る以外は、ごく平凡な中流貴族の宗孝。御所に鬼が出たという噂を聞き、仲間たちと度胸試しで確かめに行くが、そこに居たのは怪異を愛する変人と名高い名門貴族・宣能だった。なぜか彼に気に入られてしまった宗孝は、彼と共に鬼の正体を追うことに。結局、人の仕業とわかって落胆する宣能だったが、その後も続く怪異の裏には、とある陰謀が隠れていて…。新感覚、平安冒険譚。(作品紹介より)

 

 

平安妖怪物と思いきや

物語に怪異やもののけは出てきません。主人公の宗孝は、ばけもの好む中将とあだ名される宣能につき合わされ、怪異が出るという現場に連れて行かれます。しかし、そこで待っているのは怪異ではなく生身の人間でした、、、。というのがこの物語です。

 

たぶん普通にタイトルからイメージする、ばけものやもののけとそれに対抗する陰陽師なんかも出てきません。出てくるのは、怪異を隠れ蓑にした人間のみなので、タイトルで引っ張らた人はちょっと期待はずれかもしれません。

 

ただ、平安の当時にこの物語の登場人物たちのように、怪異を検証しようとする人がいたかどうかはわかりませんが、個人的には当時に起きたであろう怪異を科学的に?考えるこの物語の視点は斬新で面白いと思いました。

 

 

平安の雰囲気と現代的な読み物

作者はもともとライトノベルのレーベルの活躍する作家さんなので、この作品もライトノベルらしい読みやすさと躍動感で、葵祭や宮廷の優雅さなど平安時代の雰囲気を表現しています。一方で、瀬川ことび名義でホラー作品も発表してるだけあって、平安の闇夜のおどろおどろしさはさすがの迫力です。

 

また、主人公の宗孝の十二人の姉(今作では全員は出てきませんが)や、「ばけもの好む中将」といわれる宣能など個性的なキャラクターも楽しめます。特に、今作出てきた宗孝の姉たちは天皇の側室から尼さん、学者の妻やはては家出した姉まで、みんな個性的で、物語の中でしっかり動いていました。

 

 

古典のオマージュ

所々で古典作品のオマージュ的な場面があります。『あさきゆめみし』を紹介したときに書きましたが、私は大学で『源氏物語』を勉強したので、この作品の葵祭のシーンや若紫のシーンなど『源氏物語』のオマージュがあるとちょっとニヤリとしてしまいました。

 

『源氏』以外にも物語り全体のテーマには『伊勢物語』がかかわってきますし、おそらく私が気付かないだけで、他の古典作品のオマージュもあると思います。古典文学が好きな人も楽しめる仕掛けだと思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

平安時代をテーマにした小説は、江戸時代の人情ものや幕末、戦国時代と比べて少ないかなと思います。風習が今とはかけ離れていることや、人の動きが少ないのが原因かなと思います。そんななかでこの作品は平安時代をテーマにしつつも、

牛車、爆発しろ(P122)

なんていう、いかにも今風な表現も使い、不思議と平安を身近に感じれる作品になってます。シリーズものなので、次回作も読んでみようという事で、星三つです。

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