おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『おそろし』 宮部みゆき 宮部さんのすごさが分かる

   

書評的な読書感想文079

『おそろし 三島屋変調百物語事始』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

角川文庫 2012年4月

時代 ホラー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

江戸時代の怪異を題材にした物語。といっても、妖怪やもののけの類いではなく、人間の怨念が起こす怪異。物語に没入し、登場人物の怨念に思わず共感してしまうのは、宮部みゆきさんの筆遣いの巧みさ故でしょうか。

 

 

あらすじ

17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕。(作品紹介)

 

 

三島屋変調百物語

物語は、ある事件のせいで心を閉ざしてしまった主人公・おちかが、さまざまな人の怖くて不思議な話を聞くという話です。怪談話を聞くのは一回につき一つだけ。なので、一夜にして百個の怪談をする百物語の変調になります。

 

客が語る話をおちかが聞くという形式なので、客の語りとおちかが合いの手を入れる会話形式と、回想が行ったり来たりするのですが、決して読みにくいことはなく、むしろ知らぬ間に物語に没入して、自分もおちかのそばで話を聞いてる気分になりました。

 

 

曼珠沙華

物語で語られている、怪談のさわりを少し。

 

曼珠沙華とは彼岸花のこと。一番最初の語り手はこの曼珠沙華を見ただけで、恐怖で震えてしまう藤吉という男性。藤吉は子ども頃火事で両親を亡くしましたが、建具職人の長兄・吉蔵が親代わりになって、藤吉ら兄弟の面倒を見てくれました。

 

その吉蔵がケンカで仲間の職人をあやめてしまいます。何とか死罪は免れましたが、遠島になってしまいます。

 

藤吉は兄が遠島になっていることを隠して、奉公に上がり何とか手代にまで取り上げられました。そんな矢先に吉蔵が遠島から戻ってきました。

 

吉蔵が遠島から帰ってきたことで、物語は動き出すのですが、このときの吉蔵の気持ちも、藤吉の気持ちもものすごく共感できます。おそらく、どちらも誰もが持っている心の弱さが元になっている感情だからでしょう。

 

嫉妬、甘え、恨み、ねたみなど、人間誰しもが持っている心の弱い部分が種になって生まれた負の感情に思わず共感させられるのは、宮部さんの筆の巧みさだと思います。そして、その負の感情がつもりにつもると怪異が起きます。

 

 

人の感情が起こす怪異

江戸時代の怪異の話だと、私は以前紹介した『しゃばけ』シリーズを思い出してしまいますが、『しゃばけ』がストレートに妖怪やもののけが出る物語に対して、この物語は人の思いが折り重なって怪異が起きます。

 

昔語りの形式で物語の没入し、誰もが持っている心の弱い部分から生まれた負の感情に共感しているので、その負の感情が折り重なった怪異に妙な迫力を感じてしまいます。作中で表現されているように

「人の心の真っ暗な納戸の奥を覗き見て」(P339)

しまった気持ちになります。ちょっと怖いです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

何度も書きますが、物語に没入されられ、登場人物の負の感情に共感し、人の心の奥を覗き見されられてしまう作品です。そんなにたくさんの作品を読んだわけではないのですが、人の心の奥底のひだを表現する、宮部みゆきさんのすごさを感じれる作品だと思います。

 

シリーズものなので、勇んで続きが読みたくなる作品ってことで星四つです。

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