おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『最後の恋』 アンソロジー 読みたい作家に出会える

   

書評的な読書感想文078

『最後の恋 つまり、自分史上最高の恋。』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

アンソロジー(作家別索引

新潮文庫 2008年12月

アンソロジー 恋愛(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

女性作家による、最後の恋をテーマにしたアンソロジー。「最後の」をどう考えるかが、腕の見せどころです。サスペンス的なのから、ほのぼの系まで色々ありますが、沢村凜さん、柴田よしきさんは他の作品も読みます。

 

 

あらすじ

もはや、少年少女が出会うような、初々しい恋じゃない。変わらない恋心なんてない、そんなのとっくに知っている。だけど……。大人になっても「こんなの初めて」ってあったんだ。すれ違いや別れをくり返してきた彼らだけが知る、「最初で最後」のかけがえのない瞬間たち。8人の作家が描き出す、経験してきたすべての恋を肯定したくなる珠玉のアンソロジー。最後の恋、それはつまり、自分史上最高の恋。(作品紹介より)

 

 

『春太の毎日』三浦しをん

おなじみ「今好きな作家で打線を組んでみた」で六番に入っている三浦しをんさん。これが目的で買いました。そして、期待通り面白かったです。

 

ちょっとした仕掛けがあるのですが、その仕掛けは物語の中盤でネタバレしています。が、ネタバレしてからが面白いのはさすが三浦さん。「最後の」の解釈が一番とっぴなのはこの作品。三浦ファンは確実に楽しめます。

 

 

『ヒトリシズカ』谷村志穂、『海辺食堂』阿川佐和子

私はどちらも初見の作家さんです。どちらも最後でガラッと物語が変わります。ただ、意味合いは全く逆かも。

 

『ヒトリシズカ』は八つの作品の中でもちょっと異色かもしれません。ネタバレになるのであまり書けませんが、ラストで好みが分かれるかもしれません。私はちょっと苦手です。

 

『海辺食堂』は童話というか、寓話的な雰囲気の話です。私は勝手に脳内で外国の港町の物語で再生してました。

 

 

『スケジュール』沢村凜

収穫その①。初見の作家さんでが、他の作品も探して読もうと思いました。

内容を少し

夏休みの宿題を毎年きっちり24日終わらせるなど、スケジュールを立てそれを守ることを得意とする主人公の女性。二十四に恋をして、二十五歳で結婚する。そんなスケジュールを立てた彼女は、予定通り恋をして(二十四で恋が出来なかったら一年づつずらす予定だった)、さあ二十五際になって、、、。

と云う話。

気に入った点の一つがものの見方

子どものすぐれた習慣がすべて親のしつけの賜物と思うなんて、とんだ勘違いだ。(P138)

 

「私たち、洗脳されていると思うのよね」(中略)

「人は生きているかぎり恋をしてなきゃいけない、みたいに思い込まされてる」(P157・158)

これ以外にもちょっと斜に構えたものの見方のフィーリングが私に合いました。

 

そして、なにより最後のオチが秀逸です。「最後の」の部分をある意味ちょっと皮肉ったこのオチで持っていかれました。

 

 

『LAST LOVE』柴田よしき

収穫その②。以前紹介した『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』の時にも、今回と同じくアンソロジーで柴田さんの作品が載っていて、他の作品も読んでみたいと思わされましたが、今回よりいっそう思いました。

 

内容的にも面白いのですが、何より読みやすく、登場人物の感情に共感できるのが良かったです。相性のいい人のことを「馬が合う」といいますが、この作家さんは馬が合う作家さんです。

 

 

『私は鏡』松尾由美、『キープ』乃南アサ

『私は鏡』はちょっとミステリー調の作品です。そして「最後の」にこだわった作品でもあります。舞台は大学のサークルなので、登場人物たちは20才前後です。「最後の恋」にはまだ早い年齢の子達ですが、最後に謎が解き明かされると「最後の恋」に納得できます。

 

『キープ』の乃南さんは前から気になっていた作家さんです。この人の作品もちょっと目当てでこの本を買いましたが、少し期待はずれでした。主人公がバーの店員に語る形式で物語が進むのですが、回想とバーの会話がごちゃ混ぜになって読み辛かったです。

 

ただ、乃南さんは、未だ気になる作家さんなのでまた挑戦します。

 

 

『おかえりなさい』角田光代

以前紹介した『八日目の蝉』の角田さんの作品。一番素直な解釈で「最後の恋」を表現してます。「最後の」=結婚です。ただ、解釈は素直ですが、表現方法はトリッキーです。また、読後感が(あくまで私の予想ですが)人によって正反対になるようなラストで、独特の後味を持った作品です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

サブタイトルや作品紹介にある「つまり、自分史上最高の恋」というアオリはどうなんでしょう?個人的には大げさだと思います。

 

むしろ、甘辛しょっぱい、バランス取れた幕の内弁当ではないですが、ミステリー調、サスペンス、ほのぼの系、あまい恋も苦い恋もちょっと笑える恋も色々あって、必ずしも「自分史上最高の恋」ではないが、それぞれが「最後の恋」を表現していると思います。

 

「最後の」を表現するために、色々工夫された作品ばかりなので、この作家さんの別の作品を読んでみようって思える作品にきっと出会えるってことで、星四つです。

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