おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『焦茶色のパステル』 岡嶋二人 二人組作家

   

書評的な読書感想文077

『焦茶色のパステル(新装版)』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

岡嶋二人(作家別索引

講談社文庫 2012年8月

ミステリー 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

デビュー作とは思えないハイレベルな作品です。物事の考え方が秀逸なのと、作中の競走馬を使った犯罪のスキームに感心してしまいました。ただ、競馬を知らない人だと、分かりにくい所があるのが難点です。
 

 

あらすじ

競馬評論家・大友隆一が東北の牧場で銃殺された。ともに撃たれたのは、牧場長とサラブレッドの母子・モンパレットとパステル。隆一の妻の香苗は競馬について無知だったが、夫の死に疑問を抱き、怪事件に巻き込まれる。裏にある恐るべき秘密とは?ミステリー界の至宝・岡嶋二人のデビュー作&江戸川乱歩賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

岡嶋二人のデビュー作

今好きな作家で打線を組んでみた」で二番に入っている岡嶋二人さんのデビュー作です。岡嶋さんは日本では珍しい、二人一組みの作家さんで徳山諄一さんがプロットを書き、以前紹介した井上夢人さんが執筆するスタイルだそうです(コンビ解散間際は井上さんがプロットのほうも担っていたようですが)。

 

なので「打線を組んでみた」では、岡嶋さんと井上さん両方で二番ということにしています。

 

岡嶋さんはこの作品で江戸川乱歩賞を受賞してデビューを果たしているのですが(前年にも同じ賞で最終候補になっていますが)、やや淡白なきらいはありますがデビュー作とは思えない完成度はさすがだと思いました。丁寧な描写で読みやすく、謎が解けたと思ったらところからもう一波乱あって面白いです。伏線の張り方もわざとらしくなくていいと思いました。

 

しかもこの作品、新装版なので2012年発行ですが、初出は1982年です。作中では携帯電話もなく、東京から東北への移動手段は車か夜行列車です。ただ、30年以上も前の作品なのにまったく(移動手段以外は)古びた感じがしないのがすごいと思います。今日、出版された言われても、普通に受け入れられます。

 

 

考え方が秀逸です

トリックについて書いてしまうとネタバレになるので、本筋に関係ない私が気になった部分を引用します。

山路も宮脇も狩猟会の会員であるらしい。山路は競馬の予想紙を発行し、馬を持っている。宮脇も馬主だという。いわば、常に動物を相手にしているのではないか。その同じ人間が、動物を殺すために銃を持っている。信じられなかった。(P69)

 

「しかし、未亡人てのはすごいね」

(中略)

「未(いま)だ亡くならざる人、なんてさ。この言葉考えたのは、絶対に男だね。女に対する不信感がよく出てるよ」(P236)

こういう考え方のセンスはおそらく執筆担当の井上さんのものでしょうが、特に「未亡人」のくだりなどはハッとされられました。

 

また、作中では競走馬の子供を利用したある犯罪行為のスキームが出てくるのですが(これはプロット担当の徳山さん発案か)、現実でも実現できそうな、面白い考え方で感心させられます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

物語は競走馬を育てる牧場で起きた事件を中心に話が進みます。なので、競馬の知識が必要ですが、探偵役の二人の女性のうち、一人がずぶの素人でもう一人が競馬雑誌の記者という設定で、二人のやりとりを読むことで読者も自然と競馬の話が理解できるようになっています。したがって、競馬を知らない人でも物語を十分楽しめます。

 

ただ、残念ながら殺人を犯した動機などは、競馬に詳しくないと理解できないのかなと思います。また、デビュー作でこれだけ面白いのなら、これ以降はもっと面白いだろうと期待をこめて、おすすめ度はあえて控えめの星三つです。

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