おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『鬼麿斬人剣』 隆慶一郎 隆流の美学

   

書評的な読書感想文075

『鬼麿斬人剣』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

隆慶一郎(作家別索引

新潮文庫 1990年4月

時代 バトル(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

江戸時代を舞台にしたロードノベル。主人公とその師匠の職人としての美学、男としての生きざま、異形の剣術。とにかくかっこいい。また、各地で遭遇する事件は二重構造になっていて、キャラの魅力と共に楽しめます。

 

 

あらすじ

山中に捨てられ、長じて名刀工・源清麿に師事した巨躯の野人・鬼麿は、亡き師が心ならずも遺した数打ちの駄刀を諸国に捜し、切り捨てる旅に出た。様(ためし)剣術独特の構えから繰り出されるその長刀は、人も刀も石をも鉄も瞬時に切り裂く。中山道、野麦街道、丹波路、山陰道と、師の足跡を追い、女を惹きつけ、伊賀者に追われつつ、異色のヒーローが繰り広げる斬人剣八番勝負。(作品紹介より)

 

 

江戸時代のロードノベル

今好きな作家で打線を組んでみた」で八番に入っている隆慶一郎さんの作品。

 

物語の主人公・鬼麿は刀を作る刀工の弟子です。亡き師匠源清麿(この人は実在の人物)が江戸から萩へ伊賀の忍者から逃げる道すがら、旅費を稼ぐために心ならずも作った駄作の刀を折るために、師匠と同じ道を旅します。

 

いわば江戸時代を舞台にしたロードノベルです。しかも、鬼麿の刀を探す旅と過去の回想で清麿の逃避行の旅も描かれている二重の構造になっています。

 

 

隆流の美学

物語の随所に隆慶一郎さん流の美学が散りばめられています。そういった意味では『死ぬことと見つけたり』と似ているかもしれませんが、『死ぬことと見つけたり』では武士の美学が語られていますが、こちらは職人の美学が語られいます。

 

だらだらと私なんかが語ってもこのかっこよさは伝わらないので一つだけ、

『恥のある者』とは、本来、武士をさすものだが、師匠は職人だって同じだ、と云う。職人の巧緻を極めた芸は、とても素人の理解出来るものではない。素人どころか同業の職人だって分かりはしない。(中略)他人の理解を絶したものに心血を注ぐことは無意味ではないか。確かに無意味だろう、と師匠もいう。だが、職人はそれをやらざるおえない。やらなければ本物の職人ではない。

「何故って、その職人は『恥のある者』だからさ。それを恥と思わなくなったら、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまったほうがいい」(P116)

 

職人の美学以外にも男としての美学など、隆流に美学が詰まっていてとにかくかっこいいです。

 

 

山窩と異形の剣術

主人公の鬼麿は『忍者も及ばぬ』といわれた山窩の一族です。山窩とは幕府や藩の支配も及ばないような山奥で移動生活をする山人で、どんな霧深い森でも道に迷うこともなく、忍者以上の身体能力を持っています。

 

また、主人公は普通の人なら抜くだけでも苦労する程、長い刀を用い、試し切りのような異様な剣術を使います。自分を中心に、大太刀と腕の長さの届く円の内側に結界を張って、円に進入するものをことごとく切り伏せます。

 

旅先のあちこちでトラブルに巻き込まれる主人公ですが、抜群の身体能力と異形の剣術で切り抜ける、異色だけどかっこいいヒーローになってます。

 

 

物語の二重構造

上にも書きましたが、物語は二重構造になっています。師匠の駄作の刀を探す主人公・鬼麿。回想の中で語られる、伊賀の忍者から逃げながら旅をし、刀を打つ師匠の清麿。

 

どちらも行く先々でトラブルに巻き込まれたり、敵となる伊賀の忍者などと戦闘になったりします。鬼麿の野生的な魅力、清麿の美男ぶりを始め、脇を固めるキャラが敵味方共に魅力的です。また、必ず最後は鬼麿の試し切り剣術が炸裂し、すっきりとまとめてくれます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

何より、隆慶一郎さんの描く男の生き様がかっこいいです。武士の生き方もいいのですが、職人の鬼麿、清麿も魅力的です。物語の二重性や脇を固めるキャラ(個人的には鬼麿と同じ山窩の少年たけが好きです)も魅力的ってことで、星四つです。

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