おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『すべてがFになる』 森博嗣 傑作ミステリィ

   

書評的な読書感想文069

『すべてがFになる』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

森博嗣(作家別索引

講談社文庫 1998年12月

ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

これは傑作です。物語の胆になる密室トリックは、前を警戒していたら後ろから殴られたかの様な衝撃でした。固定観念をぶち破るトリックでとても好きです。また、主人公達の思考の描写がとても面白いです。

 

 

あらすじ

孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。第一回メフィスト賞受賞作!(作品紹介より)

 

考え方が理系

理系ミステリーといわれる森博嗣さん。この作品の主人公は工学部の助教授と生徒のコンビですし、物語の舞台はコンピュータ関係の研究所です。ただ、物語の題材というか、舞台が理系だから理系ミステリーと呼ばれているわけではないと思います。

 

では、何理系か?私は考え方だと思います。

「僕は、真実を知っているわけではない。ただ……、科学的に実現が可能な方法があることに気づいただけだ。」(P335)

 

「これだけの境界条件から、科学的に再現が可能な他の解答が考えられますか?」(P469)

どちらも事件の真相に気がついた主人公の工学部助教授の犀川のセリフです。従来のミステリーのように与えられた条件をひっくり返すような(アリバイを破るとか、密室の抜け道を探す的な)謎解きではなく、与えられた条件から考えられる可能性を見つけ出す推理が、理系なのかなって思います。

 

 

驚愕のトリック

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、この物語の肝になっている密室トリックがとても好きです。ちょっと上でも書いたのですが、どうにかして条件をひっくり返す(今回の場合、密室を密室でないと証明する)のではなく、密室は密室のままなのが、フェアでいいと思います。

 

その上で、常識の及ぶ範囲の外側から真相が現れ、ものすごい衝撃を受けました。衝撃を受けますが、だまされた感じはなくて確かに「科学的に再現が可能な解答」は他にはないなと思わされます。

 

私はそんなにたくさんのミステリーを読んだわけではないのですが、そのなかでこのトリックが一番好きなトリックです。(トリックという言葉を使うこと事態がこのミステリーにはふさわしくないかもしれませんが)

 

 

天才達の思考

この物語の被害者・真賀田四季は天才工学博士の肩書きを持っています。物語の中では真賀田が天才として神格化されていますが、主人公の犀川や西之園も私から見れば、十分天才です。

 

主人公の一人、西之園は三桁の掛け算を一瞬で暗算し、ある日時の65535時間前が何年前の何月何日の何時かを答えるのに八秒しか掛かりません(しかも、緊張で実力の半分しか出せない状態で)。

 

もう一人の主人公、犀川にしても、

「なんていえば良いのかな。数学の問題を解くときと同じだよ。ああ、ここを考えていけば良いんだって、気がつきときがあるだろ。」(中略)「僕の場合、その道がさきに見えてくるんだ。それからは、ひたすら、それを考えれば良いだけ。必ずその先に答がある。今までに、この予感を裏切られたことはない」(P322、323)

発想力の天才なのかなって思います。ちなみに、この会話の時に西之園は、素早い頭の回転でしらみつぶしに考えをめぐらせ、いきなり回答を得ていると答えます。

 

おそらくですが、作者の実体験や作者の親しい人にこういった考え方を出来る人がいるのでしょう。天才的な才能を持つ人達の心理描写の思考版、思考描写が豊富なのもこの物語の面白いところです。

 

 

S&Mシリーズ

この物語以降にも、犀川と西之園が謎解きをするミステリーS&Mシリーズは続きます。私としては、この『すべてがFになる』のトリックが衝撃的過ぎて、他の作品はそこまで驚けませんでした。ただ、犀川と西之園の思考描写が細かいのは、変わらないのでそれだけで十分面白です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

この物語を初めて読んだときの衝撃は忘れられません。そして、今回このブログを書くためにもう一度読みましたが、やっぱり面白いって「傑作ミステリィ」ことで最高評価星五つです。

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