おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『忍法忠臣蔵』 山田風太郎 史実+忍法

      2016/03/22

書評的な読書感想文067

『忍法忠臣蔵 山田風太郎忍法帖②』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

山田風太郎(作家別索引

講談社文庫 1998年12月

時代 バトル(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

史実とフィクションの融合が絶妙で、結果は分かるのに展開は読めません。妖艶な忍法を使う女忍者や、赤穂浪士の妻女など女性が壮絶な戦いを見せるのも見所です。トラウマを抱えた主人公のラストがちょっと切ない。

 

 

あらすじ

殿中で吉良への刃傷沙汰により、浅野家は断絶され、赤穂浪士は仇討の機を窺う。一方、吉良方が頼りとする上杉家では、家老の千坂兵部が女忍者を用い、仇討防止に色仕掛けで浪士の骨抜きを企む。大石内蔵助が同志と密議の最中に、妖美と怪異の忍法が華と炸裂した!殺気と妖気が奔流のごとくに交錯する!(作品紹介より)

 

 

忠臣蔵と忍法合戦

主人公の無明綱太郎はもとは大奥を警護する伊賀の忍者でした。綱太郎は大奥の下級女中に恋をし、二人は結婚の約束をしました。ところが、この女中が将軍に見初められてしまったことにより物語は動き出します。

 

一緒に逃げようと言う綱太郎に、忠義を守るため将軍の元へ行くと女中は言います。しかし、綱太郎は女の心の中に忠義だけでなく、栄達をゆめみる心が芽生えているのを見抜きます。絶望した綱太郎は忍法を使いある強烈な方法で女中を殺害、出奔します。このときから、綱太郎は忠義と女が嫌いになってしまいます。

 

ひょんなことから上杉家の家老・千坂兵部にかくまわれる綱太郎。この上杉家の藩主・綱憲は忠臣蔵の赤穂浪士の宿敵・吉良上野介の息子でした。綱憲は父親を助けるため忍者軍団に赤穂浪士の殺害を命じます。一方で家老・千坂兵部は赤穂浪士が殺害されれば、幕府と世間の疑惑の目が上杉に向くと考え、自前の女忍者軍団に赤穂浪士を守りつつも色仕掛けで復讐の気持ちを骨抜きにするよう命じました。そして、綱太郎に女忍者軍団が裏切ったりしないように検分役を頼みました。

 

こうして、忠臣蔵の裏で、同じ上杉家の忍者同士が戦いながら、赤穂浪士の脱落を目指すという状況が出来上がります。

 

 

史実とフィクションの融合

そもそも「忠臣蔵」自体がかなり脚色されているのですが、さらに山田さんはそこに忍者の要素を加えました。誰もが知ってるように最後は赤穂浪士が討ち入りを成功させます。つまり、綱太郎率いる女忍者軍団は任務に失敗することは確実です。

 

にもかかわらず、一体どういった展開で任務失敗に終わるのか全く読めず、また、赤穂浪士たちの葛藤がよく分かり、大石内蔵助の怪しげなカリスマ性なども垣間見え、ハラハラしながら物語を楽しむことが出来ます(以前紹介した『甲賀忍法帖』でもほぼ同じことを言いましたが)。

 

途中大石内蔵助なども、女忍者に絡めとられることもあり、ほんとに討ち入りが成功するのか心配になるくらいでした。

 

 

女の戦い

忍法合戦のメインは綱太郎率いる女忍者が、エロティックで怪しげな忍法で、綱憲の忍者を撃退しつつ、赤穂浪士に色仕掛けをする様子が描かれています。山田さんらしい、とんでもないアイディアの忍法がたくさん出てくるので、ぜひ紹介したいのですが、ネタバレになるしエロ要素も結構あるので、ここでは紹介しないことにします。

 

女性の活躍は女忍者軍団だけではなく、赤穂浪士の妻女も活躍します。とはいっても、戦闘に参加するのではありません。赤穂浪士の中でも下級武士は討ち入りの準備が整うのを待つ数年の間に、命をつなぐために妻女を遊郭に売るものもいました。そうやって売られて、病気にかかったり、心が壊れてしまった妻女たちが大石内蔵助の前にあらわれます。

 

彼女たちの壮絶な行動に思わず鳥肌が立ちました。

 

 

切ないラスト

主人公の綱太郎は中盤では影が薄くなりますが、終盤でまた活躍をします。

 

当然、赤穂浪士の討ち入りとリンクして物語は進むのですが、このラストが私は好きです。討ち入りが成功するまでの流れで驚かされますし、序盤の伏線を回収しつつ、綱太郎の出した結論がちょっと切なくて読後感に余韻を残してくれます。

 

書評的な読書感想文のまとめ

物語の結果は分かっているので読み手は、どうやってその結果に持っていくのだろうと考えながら読むことになります。しかし、さすがは山田さんで、ことごとく予想を裏切ってくれました。その上、ちょっとエッチで驚愕の忍法にさらに驚かせされます。以前紹介した『甲賀忍法帖』ほどではないですが、ハイレベルなエンタメ小説ということで星四つです。

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