おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『シンメトリー』 誉田哲也 今回はグロ少な目

   

書評的な読書感想文066

『シンメトリー』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

誉田哲也(作家別索引

光文社文庫 2011年2月

人間ドラマ 警察(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

姫川シリーズの短編集。事件そのものにスポットを当てた長編と違い、姫川や被害者、加害者の心情が丁寧に書かれていてひと味違った楽しみ方ができました。姫川の犯罪に対する考え方が分かるのも面白いです。

 

 

あらすじ

百人を超える死者を出した列車事故。原因は、踏切内に侵入した飲酒運転の車だった。危険運転致死傷罪はまだなく、運転していた男の刑期はたったの五年。目の前で死んでいった顔見知りの女子高生、失った自分の右腕。元駅員は復讐を心に誓うが……(表題作)。ほか、警視庁捜査一課刑事・姫川玲子の魅力が横溢する七編を収録。警察小説№1ヒットシリーズ第三弾 !(作品紹介より)

 

 

姫川シリーズ第三弾

以前紹介した『ストロベリーナイト』『ソウルケイジ』に姫川シリーズの第三弾です。ストーリー的に前作とのつながりがほとんどないので、この作品から読んでも楽しめるでしょう。

 

また、今回の作品は短編集になっていて、今までのような大きな事件をライバルと争いながら解決する形ではないので、事件の真相を知った時の大きな驚きや、人間関係の重厚さはないです。そのぶん、姫川や被害者、加害者の心情にスポットを当てた人間ドラマになっています。

 

 

被害者と加害者の割り切れない境界

今回の作品は七つの短編が載っていて、それぞれ一つの事件を取り上げています。それぞれに被害者と加害者がいるのですが、どの話でもその境界があいまいです。被害者の様な加害者がいたり、加害者の様な被害者がいます。

 

例えば、表題作の短編「シンメトリー」では、飲酒運転の挙句、列車事故を起こした男が被害者で、その事故で知り合いを亡くし、自身も右腕をなくした男が加害者です。別の事件では被害者と加害者の間でいじめがあったりもします。

 

タイトルは『シンメトリー』左右対称ですが、個人的には被害者と加害者のグラデーションが印象に残りました。

 

 

姫川の考え

こういった、一概には割り切れない事件を姫川がどう解決して「どう感じたか」が描かれているのがこの作品の魅力だと思います。前に作の長編でも姫川の心情は書かれていましたが、やはり事件解決やライバルとの争いがメインなので、分量的にも内容的にも今回の作品いくらべるとおとなしめです。

 

私が気になったところを少し

刑事でもある自分が、殺人を犯す可能性。そんなことは考えるまでもない。ありだ。(P69)

 

未成年の強盗殺人犯を逮捕して。

ちっ、ガキか。これがこの事件に対する、玲子の正直な感想だった。こんな連中は、いくら捕まえてぶち込んだところで、碌な反省もせずにまた娑婆に出てきてしまうに決まっている。そう思うと、いまさらではあるが少年法という悪法に激しい憤りを感じる。(P75)

 

援助交際は誰にも迷惑をかけていないし、悪いことではないとうそぶく女子高生を追い詰める姫川の描写は結構必見だと思います。前に二作ではいまいちキャラが立っていないというか、ライバルのガンテツや日下に喰われていた感のある姫川ですが、今回の姫川は結構好きですね。

 

ちょっと取り上げたところが偏っていて、少年犯罪に厳しいといったイメージになりそうなのですが、別にそういうわけでもなく単にちょっとデリケートなところにズバッと突っ込んでいるのが好印象ということです。犯人に共感して周りに心配される、いつもの姫川も出来てきます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

事件そのものを取り上げた『ストロベリーナイト』『ソウルケイジ』に対し、被害者や加害者にスポットあて、姫川が「どう感じたか」が見所のこの物語。ちょっと今までとはちがった味わいですが、とても楽しめました。このブログでは姫川の心情を中心に取り上げましたが、他にも加害者の父と、被害者の遺族という両方の立場になってしまった元刑事・倉田なる登場人物なんかはかなり魅力的です。

 

誉田さんの持ち味のリーダビリティはそのままに心情表現の豊富な今回の作品は、グロいシーンがほぼないのでそういったのが苦手で敬遠していた人も楽しめる、誉田さんの警察物の初心者向けにも良いかもしれないってことで、星四つです。

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