おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『毒猿』 大沢在昌 二匹目のドジョウがいた

   

書評的な読書感想文062

『毒猿』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

大沢在昌(作家別索引

光文社文庫 1998年8月(ブログで使っている画像などは新装版のものです。)

ハードボイルド 警察(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

新宿鮫シリーズ第二弾です。台湾の刑事・郭と鮫島の友情と台湾の殺し屋・毒猿とヒロイン奈美の心の交流が見所。どちらもちょっと切ないです。また、アクションが盛りだくさんで、緊張感の半端なさは前作以上です。

 

 

あらすじ

歌舞伎町の女・奈美。孤独な彼女が心惹かれる外国人・楊は、謎の影を持つ男だった。一方、「新宿鮫」と恐れられる新宿署刑事・鮫島は、完璧な「職業兇手」(殺し屋)が台湾から潜入していることを知る。「毒猿」と呼ばれる男が動きはじめた刹那、新宿を戦慄が襲う!鮫島は、恐るべき人間凶器の暴走を止められるのか?奈美の運命は……。圧倒的な興奮と感動が再び!!(作品紹介より)

 

新宿鮫シリーズ第二弾

以前紹介した『新宿鮫』の第二弾です。前作の主人公の鮫島や晶、桃井などのキャラクターが出てきますが、ストーリー的にはつながりが薄いので、この作品から読んでも楽しめます。

 

 

友情と恋愛

物語は三人の台湾人を中心に進みます。殺し屋の手から逃れるために、日本に逃げてきた台湾マフィアのボスの葉。葉を殺すために日本に密入航した凄腕の殺し屋・毒猿。毒猿を逮捕するために、単身で日本に来ている台湾の刑事・郭。

 

主人公の鮫島はひょんなことから、台湾の刑事・郭と知り合います。そして、郭の目的が法手続きをすっ飛ばしてでも自分の手で毒猿を逮捕することと知り、協力することになります。

 

あるとき、鮫島は郭に対してこんなことを語ります。

「(法を犯せば)近道だ、そんなことは皆知っているけど、ふつうはそれをしない。あえて、わかっていても、面倒くさい遠まわりをしている。なのに、あたり前の顔をして近道を使い、それを不満に思う人がいたら、脅してひっこめようとする、そういう奴らを放っておいたら、(中略)そんな不平等は許せないんです。」(P169)

日本の警察官にはけしって言わないような本音をもらし、いつしか、日本と台湾のアウトロー刑事の間に友情が生まれます。鮫島はまたこんなことを思っています。

郭の警官としてのやりかたをすべて、鮫島は知っていたわけではなかった。もし郭が同僚だったら、鮫島はうまくやっていけたかどう自信はなかった。しかし、自分自身のために警官でありつづける、という鮫島の考え方に、郭は非常に近しいものももっていた。(P425)

この友情の行く末が、物語の1つの見所です。

 

郭が鮫島という相棒を日本で見つけたように殺し屋・毒猿も奈美という女性と行動を共にします。私はこの物語の中で奈美が一番好きですね。彼女は中国残留孤児の二世で13歳の時に中国から日本に移り住みました。それ以来、彼女は孤独を抱えて生きてきて、物語の時には新宿のピンサロに勤めています。

 

ふとしたきっかけで、毒猿と出会い、惹かれ、行動を共にする過程がなんともリアルで切なく、泥臭い物語の中に艶のようなものを与えてくれます。内容的にハッピーエンドになるはずがないのですが、幸せな結末を願わずにはいられませんでした。

 

 

アクション映画の緊張感

前作はきりきりとしたサスペンス的緊張感が中心でしたが、今回は銃撃戦に格闘戦とアクションがふんだんにあります。マフィアのボス・葉を追い詰める毒猿の描写はさながらアクション映画のようです。

 

今回の話は郭と葉と毒猿の三すくみになっていますが、葉だけは明らかに悪役として書かれているので、台湾マフィアや葉と手を組んだやくざをある意味、正義のヒーロー・毒猿が倒しながら、葉を追い詰めるアクション映画の緊張感が楽しめます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

新宿鮫』を読んだときに、かなりのインパクトを感じ、シリーズを追いかけようと即決しました。ただ、一作目のインパクトが強けれ強いほど、二作目以降がっかりしてしまいがちですが、この作品は全くそんなことはありませんでした。なんなら、今回の物語の方が面白いかもしれませんってことで、星四つです。

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