おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『鳥人計画』 東野圭吾 日の丸飛行隊殺人事件

   

書評的な読書感想文061

『鳥人計画』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

東野圭吾(作家別索引

角川文庫 2003年8月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

ミステリー+スポーツ界の闇です。謎を解いたのは誰かを犯人が推理する形式が、物語の胆かと思わせて、話が二転三転して翻弄させられます。また、作中では「鳥人計画」に対して否定的ですが私はわかる気がしました。

 

 

あらすじ

「鳥人」として名を馳せ、日本ジャンプ界を担うエース・楡井が毒殺された。捜査が難航する中、警察に届いた一通の手紙。それは楡井のコーチ・峰岸が犯人であることを告げる「密告状」だった。警察に逮捕された峰岸は、留置場の中で推理する。「計画は完璧だった。俺を密告したのは誰だ?」。警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき「計画」の存在が浮かび上がる……。精緻極まる伏線、二転三転する物語。東野ミステリの傑作長編。(作品紹介より)

 

 

探偵当てゲーム

物語はスキージャンプ界のエース・楡井が毒殺するところから始まります。犯人は楡井のコーチ峰岸。完璧な計画と自信を持っていた峰岸の元に、

『楡井明を殺したのはあなただ、自首しなさい』(P70)

と手紙が届きます。ほぼ同時期に警察にも峰岸が犯人であるという手紙が届きます。

 

峰岸の視点からは、手紙を書いた人物は誰か、どうして気がついたのか。警察の視点からは、峰岸が犯人だとして、アリバイが完璧なのにどうやって殺害したのか、また、教え子の楡井を殺す動機は何かが問題になります。

 

犯人が探偵が誰だか当てるという、ちょっと変わった形式のミステリーがこの物語の肝かと思いきや、物語は全く別の方向へ展開し始めます。とあるスキージャンプチームが進めている計画が、事件の鍵を握っていることが分かってきます。その計画とは一体どんなものか。最新式のドーピングか?特別な練習方法か?

 

物語が進むにつれて個々の謎は解明されていくのですが、なぜか全体の物語全体の謎は深まっていくように思えます。微妙な違和感がキーとなっていて、真相が分かったときには驚くと共にちょっと切なくなりました。楡井の明るすぎる人物造詣が最後に効いてきます。

 

 

鳥人計画

物語のテーマはスポーツ界の闇です。ネタバレになるので、詳しくは書きませんがタイトルにもなっている「鳥人計画」が事件のキーになるだけでなく、スポーツ界の闇を浮き彫りにします。

 

この話を読んで私が思い浮かんだのは高校野球の選手の酷使の問題です。甲子園で勝ち進む高校のエースは炎天下の中、短い期間に5、6試合も投げることもあり、一生物の故障をしてしまうこともあるとか

 

。学校としては、スカウトや設備などに相当の額の投資をしているので、何が何でも勝ち進んで学校名を売ってもらわないことには元が取れません。生徒としては一生に一度の晴れ舞台なので、無茶もしてしまいます。結果、こんな虐待みたいなことがまかり通るのかなって思います。

 

物語の中にこんなセリフがあります。

「スポーツに生きる人間は、勝つことだけを要求される。見る側にしても、非人間的強さを求めてる。(中略)今はもう誰も、参加することに意義があるなどといってはくれません。国家予算を使って行く以上は、どんなことをしてでもメダルをもぎとってこい、そのためにはドーピングでも何でもやってみろ、ただしバレるな――これが世間の本音なんですよ」(P328)

ちょっと極論ですが、スポーツ界周辺の「世間の本音」を現している気がします。

 

こういった考えの中から生まれたのが「鳥人計画」です。ただ、根性論に頼ったものでも、違法なドーピングでもない科学的な練習方法です。物語の中では否定的に書かれていましたが、もう少し改良をして、希望者に施す分にはありなのかなって個人的には思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

日本で最も売れている作家と言っても過言ではない、東野圭吾さんの作品。私もこのブログを書き始める前に何作か読みましたが、どれも面白かったです。私の勝手なイメージかもしれませんが、東野さんの作風の1つに社会問題+ミステリー(もしくはサスペンス)という形式があると思います。

 

この作品もスポーツ界の闇+ミステリーと東野さんらしいプロットで楽しめました。ただ、東野さんに対するハードルが上がってしまっているのと、ちょっと登場人物が多く、個性も薄いのでいまいち分かりにくかったり、人間関係が希薄なので淡々と物語が進んでしまっていることもあり、おすすめ度は星三つです。

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