おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『四畳半神話大系』 森見登美彦 森見汁原液

   

書評的な読書感想文059

『四畳半神話大系』(文庫)

おすすめ度☆(ジョーカー的な意味で)(星数別索引&説明

森見登美彦(作家別索引

角川文庫 2008年3月

SF 青春(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

クセのある文章、クセのあるキャラ、クセのあるストーリー。間口は狭いです。ただ、奥は深いです。無限に広がる四畳半のごとく。独立しているようで、リンクしている四つの並行世界のバランスが絶妙です。

 

あらすじ

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。(作品紹介より)

 

 

森見汁原液

今好きな作家で打線を組んでみた」で五番に入っている森見登美彦さんの作品。以前紹介した『夜は短し歩けよ乙女』にも出てくる人物が登場します。

 

『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』で森見さんの特徴的な文体について取り上げましたが、今回の物語も非常に特徴的な文体で書かれています。

 大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。

 責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。(P5)

物語の冒頭の文章です。個人的には最後の「責任者はどこか。」でクスリと来てしまいます。ここで、笑える人とはおいしい酒が飲めそうです。

 

『夜は短し歩け乙女』はクセのある文章をヒロインの黒髪の乙女が、『有頂天家族』は狸のかわいらしさが中和してくれますが、『四畳半神話大系』では、中和する成分がない分、森見ワールドが濃いです。

 

森見さんの文章をクセの強いウイスキーに例えると、『夜は短し』は炭酸で割って飲みやすくなった「ハイボール」、『有頂天家族』は甘いコーラで割った「コークハイ」、『四畳半神話大系』もちろん「ストレート」です。

 

クセが強い分間口は狭いです。なので、森見登美彦さんの入門としてはおすすめしません。逆にこの作品で森見さんにはまった人は他の作品だと、物足りないかもしれません。

 

 

四つの並行世界

物語は四章に分かれています。各章は、並行世界になっており、大学一年時に幻の至宝と言われる「薔薇色のキャンパスライフ」を目指してそれぞれ別のサークルに入った後の三年生の春の話になっています。

 

この並行世界、登場人物は全く同じで、理知的で優雅な風貌の黒髪の乙女明石さんや仙人のような樋口さんなどですが、もっとも印象的な人物は主人公の悪友・小津です。彼は

野菜嫌いで即席にものばかり食べているから、なんだか月の裏側から来た人のような顔色をしていて甚だ不気味だ。夜道で出会えば、十人中八人が妖怪と間違う。残り二人は妖怪である。(中略)他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える。(P8)

と評される人物で、各並行世界で主人公を翻弄します(関係ないですが、残り二人は妖怪である。でクスリと来た人とはいい酒が飲めそうです)。

 

また、四つの並行世界は、独立しているようで微妙にリンクしていて、同じような内容が各章に有ったり、読み進めるうちに徐々に全体像や各種伏線が明らかになるのが(とはいっても、実にくだらないことですが)面白いです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

クセが強い作品なので、森見さんが好きな方でも評価は分かれるとおもいます。個人的にはすごく面白いので、(ただ『夜は短し歩けよ乙女』ほどではないので)星四つにしたいところですが、間口が狭い作品なので、おすすめ度としてはジョーカー的な意味で星一つです。

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