おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『おまえさん』 宮部みゆき テーマはジェラシー

   

書評的な読書感想文058

『おまえさん上下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

講談社文庫 2011年9月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

テーマは嫉妬心(ジェラシー)。登場人物の微妙な心の動き方がとてもリアルなので、思わず共感したり、反発したりしてしまいました。また、今作の新キャラ達は純粋で不器用な愛らしいキャラで、楽しませてくれます。

 

 

あらすじ

痒み止めの新薬「王疹膏(おうしんこう)」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。両者に通じる因縁とは。(上巻作品紹介より)

 

 

『ぼんくら』『日暮し』の続編

以前紹介した『ぼんくら』、『日暮らし』の続編です。前の二作は内容的にリンクしていましたが、今回はキャラクターは同じですが、内容的には独立しているので、この作品から呼んでもほぼ問題なく楽しめます。

 

ただ、複雑で濃厚な人間関係と最後までそこが見えない謎、おなじみのキャラクターの愉快なやりとりなど、物語のテイストは継承してます。また、今回は新キャラクターも出てきて、よりいっそうにぎやかです。

 

 

テーマは嫉妬心(ジェラシー)

現実世界の中でもジェラシーと言っても色々あると思います。物語のなかでも、色々な種類のジェラシーが出来てきます。

 

継母に対する父親を取られたというジェラシー、同じように継母に対する女としてのジェラシー。顔かたちに対するもの。次男以下の長男に対するもの。その逆。生まれ持った才能に対するもの。富くじをあて、思わぬ幸運を手に入れた人に対するもの。全て作中に出てきた嫉妬です。

 

以前に私は『ぼんくら』のテーマは身分差、『日暮し』は家族と書きました。今回のジェラシーとあわせて、どれも現代の私達の周りにも当たり前に存在して、私達の感情をゆさぶる原因になります。ほんのちょっとの時もあれば、腹の底からの時もあり、いい意味でも悪い意味の時もあります。

 

物語の中でも同様で、私達と同じように登場人物も感情をゆさぶられています。その気持ちが極まって事件になってしまうのですが、作中のキャラクター達が、私達と同じような感情の動きをしていると知ってしまってるので、思わず共感してしまいます。

 

この辺の心の動きのコントロールの上手さが、宮部さんのすごいところなのかもしれません。

 

 

新キャラが愛らしい

主人公の平四郎や弓之助。政五郎と三太郎などおなじみのメンバーは相変わらずの活躍をします。私のお気に入りの三太郎はとうとう実の母親とのエピソードに決着がついたりします。ただ、今作は二人の新キャラが登場し、物語の中で重要な役割を担うと共に、良い味出してくれます。

 

一人は将来を嘱望される新米同心の間島信之輔。人柄は爽快、誠実、頭脳は明晰。その上、十手術の達人です。ただ、まずもって顔がまずいのです。本人も顔のことはコンプレックスに思っていて、当然それは、ジェラシーにもつながります。

 

彼は平四郎の同僚として一緒に事件の解決に奔走しますが、後半はいろいろな事に翻弄されてしまいます。右往左往している様子は、がんばっている本人には悪いのですが、微笑ましく思えました。

 

もう一人は信之輔の遠縁に当たる、老人・本宮源右衛門です。彼は死体の検視官として物語上重要な役割を担うと共に、コミカルな老人のキャラで物語に笑いをもたらしてくれます。頑固ではあるがまっすぐな性格で、弓之助・三太郎のコンビが源右衛門になつくのも理解できる愛らしいキャラクターです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

シリーズを重ねるごとに、物語が長くなって今回はなんと1200ページの大作です。ただ、読みにくいところは全くなく、スイスイ読めてしまいます。実際後ろ半分は、ほぼ一日で読んでしまいました。

 

また、登場人物の感情の動きのリアルさがものすごく、読んでいて共感したり、反発したり、大変だったてことで星四つです。

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