おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『坊っちゃん』 夏目漱石 読み物として素直に面白い

   

書評的な読書感想文057

『坊っちゃん』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

夏目漱石(作家別索引

新潮文庫 2003年4月改版

純文学 青春(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

明治時代の作品ですが、文体的にも内容的にも読みやすかったです。過剰なほどまっすぐな主人公が、悪者をとっちめる様は痛快の一言。また、変に道徳的過ぎず、主人公に悪いところがあり、結末も灰色なのが良いです。

 

 

あらすじ

松山中学在任当時の体験を背景とした初期の代表作。物理学校を卒業後ただちに四国の中学に数学教師として赴任した直情径行の青年“坊っちゃん”が、周囲の愚劣、無気力などに反撥し、職をなげうって東京に帰る。主人公の反俗精神に貫かれた奔放な行動は、滑稽と人情の巧みな交錯となって、漱石の作品中最も広く愛読されている。近代小説に勧善懲悪の主題を復活させた快作である。(作品紹介より)

 

 

思っていた以上に読みやすい

自主的な読書で夏目漱石を読むのは初めてなのですが、思っていた以上に読みやすかったです。初出は明治39年なので、なじみの薄い言葉や言い回しもありますが、リズミカルで平易な文章で書いてありとても読みやすかったです。

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。(P5)

これは冒頭部分ですが、するすると、リズミカルに読めてしまうのが分かると思います。

 

 

まっすぐな主人公が悪者をとっちめる話

主人公は過剰なほどまっすぐな性格です。

おれだって中学に居た時分は少しはいたずらをしたもんだ。然し誰がしたと聞かれた時に、尻込みする様な卑怯な事は只の一度もなかった。仕たものは仕たので、仕ないものは仕ないに極ってる。おれなんぞは、いくら、いたずらをしたって潔白なものだ。嘘を吐いて罰を逃げる位なら、始めからいたずらなんかやるものか。いたずらと罰はつきもんだ。罰があるからいたずらも心持ちよく出来る。(P36)

正しいかどうかは別にして、清々しいほどまっすぐですね。ただ、こんな性格では社会生活はなかなか難しいのは、今も明治時代も同じです。

 

主人公は、教師として赴任した先の教頭らとぶつかります。

 

この教頭(主人公は赤シャツとあだ名します)がこすっからくて、いい感じの小悪党です。気に入った女性を物にするために、その婚約者の教師を田舎の学校に飛ばしたりします。また、主人公を昇給をえさに自分の派閥にひきもうとします。

 

もちろん、主人公は赤シャツに組することなく対立していくので、気持ちよく主人公に同調できて、そういった意味でもとても読みやすいです。

 

 

結末は灰色

あらすじにもあるように物語は勧善懲悪となっています。だからといって、変に道徳的ではないのが面白いところです。主人公はまっすぐではありますが、反面自己中心的ところもあり(正直だからといって、いたずらして良い訳ではないです)、融通が利かなかったりもします。逆に、赤シャツにもいい面があり、面倒見がよかったりします。

 

勧善懲悪でありながら、敵味方どちらも好悪併せ持つ人物造詣なので、人間らしくて共感できるし、リアリティーを感じます。この傾向は結末にも見られます。ネタバレになるので、詳しくはいえませんが、良くて痛みわけ。考え方次第では、主人公サイドの負けとも言える結末です。個人的には、主人公らしい結論ですっきりできまし、負けとは思ってないですが。

 

なにはともあれ、人物造詣にしろ、結末にしろ、はっきりとした勧善懲悪ではなく、灰色の部分があるのもこの物語の魅力といえます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

読み物として素直に楽しめました。主人公に共感し、笑ったり、憤ったりと感情をゆさぶられました。

 

基本的に読書は楽しむために読むと考えているので、漱石に勝手にお堅いイメージをもって敬遠していましたが、もったいないことをしたと思っています。他の作品も読んでみようってことで、星四つです。

 

あ、版権がフリーになっている作品なので、Kindle版がただなので、お持ちの方はさらにおすすめです。

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