おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』 石田衣良 切れ味重視

   

書評的な読書感想文055

『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

石田衣良(作家別索引

文春文庫 2010年3月

エッセイ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

色々なテーマのエッセイをまとめた作品で、作者の作家としてのルーツが見えたり、人生観が見えて面白いです。図書館に対する考えはとても共感できました。ただ、ファッション誌風の作者の写真はいらないのでは?

 

 

あらすじ

現代を鮮烈に描き、絶大な支持を集め続ける石田衣良の刺激に満ちたエッセイ集。恋愛、東京、子供、音楽、時事、そして文学―。あらゆるテーマに対し軽やかに、かつ鋭く切り込んでいきます。自在の作風をもつ石田衣良を形作ってきたものは何なのかを窺い知ることのできる、必読の一冊。語りおろしインタビューを新たに収録。(作品紹介より)

 

 

エッセイのテーマは色々

だいたい女性誌で恋愛相談をして、タウン誌で東京のあちこちを歩き、新聞でイラク戦争について書くなんて、節操がありません。(P246)

とあとがきで作者が言っているように、あちこちで書いたエッセイをひとまとめにしたものです。書かれた時期は1997年のデビューから2005年の頭あたりまでです。

 

上に書いたテーマ以外にも子供のことや、読書について、音楽などほんとに多岐にわたります。ただ、寄せ集めだからこそ、まとめて読むと作者のルーツや人生観が見えてきます。

 

 

作家としてのルーツ

大学時代について作者は

ぼくは浴びるように本を読み、音楽を聴き、映画を観ていた。月に五十冊ならすくないほうだった。活字はどんなジャンルのものでもひたすら愉快で、ページを離れて目に吸い込まれていくようだった。毎日千ページ以上読んでいた時期もある。あのころの力任せの読書が、現在の仕事にどれだけ役に立っていることか、はかりしれないものがある。(P90)

「力任せの読書」って表現がいいですね。一流の人は誰でも、一時は狂ったように何かに打ち込む時期があるんじゃないかと思っているので(残念ながら私にはそんな時期はない)、この文章は腑に落ちました。

 

あちこちで書いたエッセイを集めたものなので、同じような内容のものもあります。

「小説をつくる時、わたくしの最も興を催すのは、作中人物の生活及び事件が展開する場所の選択と、その描写とである。」(P97、114)

永井荷風が『濹東綺譚』のなかで言っている言葉を二回も引用しています。池袋、月島、町屋、渋谷、秋葉原と色々な街を舞台に小説を書いてきた作者らしいこだわりです。

 

 

人生観

文庫本特典の語りおろしインタビューで

人間って、一生懸命辛い思いをして、頑張って稼いだお金を、「ざまあみやがれ!」って感じで一気に使うと、なぜか元気になるんですよ。(P265)

経済的に少し余裕がある人には、無駄使いを勧めています。個人的に上手に無駄使いが出来たいたちなので、ちょっとハッとしました。

 

 

図書館の話

個人的に一番共感したのは、図書館の話。ベストセラーの本を一館で、十冊近くも購入し、貸し出しを回転させるだけさして、賞味期限が切れたら来館者に上げてしまうことについて、

この出版不況下、公共サービスには出版社や書店、作家など民業を圧迫しないだけの節度が求められているはずです。(P183)

といっています。必要なのは共存でどちらかがどちらかを食いつぶすようなことはよくないのかなと思います。

 

個人的には、大型新古書店も考え物かと思いました(私は某BOO○ ○FFのヘビーユーザーですが、そこは棚に上げて書きます)。このままだと、新古書店が出版界を食いつぶしかねないので、新古書店でも売り上げの一部を印税として出版社と作者に回すなど、なんか考える必要があるのかなって思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

色々テーマについて書いてあるので共感できるのもあれば、できないのもあります。私の場合は女性向けに書いた恋愛指南のエッセイは共感できないことが多かったです。また、上で書いた「無駄使いの進め」も経済的に恵まれてるからいえるのかな、とも思います。

 

以前紹介した万城目学さんや三浦しをんさんのエッセイのように笑えはしませんが、共感できたり、できなかったり、気軽に楽しめるってことで、星三つです。ただ、作者のファッション誌風の写真はいるか?

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