おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ソウルケイジ』 誉田哲也 テーマは父性

      2016/03/01

書評的な読書感想文054

『ソウルケイジ』(文庫)

おすすめ度☆(ジョーカー的な意味で)(星数別索引&説明

誉田哲也(作家別索引

光文社文庫 2009年10月

警察 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

姫川シリーズ、第二弾。殺人トリック、主人公のライバル、物語の構成という三つの要素が話を面白くするだけでなく、物語のテーマを訴えてきます。そのためシリーズものとしては珍しく、一作目よりも面白いです。

 

 

あらすじ

多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と 浮かび上がる――。大ヒットシリーズ第二弾!

 

 

姫川シリーズ第二弾。『ストロベリーナイト』の続編

以前に紹介した『ストロベリーナイト』の警視庁捜査一課殺人犯捜査係主任・姫川玲子を主人公とした、シリーズの第二弾です。

 

続編とは書きましたが、姫川ほか登場人物が同じなだけで物語的なつながりはほとんどないので、『ソウルケイジ』を先に読んでもま全く問題ないです。

 

 

殺人トリックが秀逸

です。以上。

 

としたいところですが、そうもいかないのでネタバレに注意しつつ少しだけ。ミステリーとしてのトリックが秀逸かどうかは分かりませんが、殺人トリックの方法そのものが、犯人の怨念というか、執念を表現しているのが個人的にはすごく好きです。

 

つまり、仕掛けがどうとか、だますだまされたといってことではなく、この殺人方法そのものが、犯人の心情を表しているので、このトリックは秀逸だと思います。

 

殺人の描写はとてもリアルで、夢に出てきそうなレベルでグロテスクです。グロテスクな描写の量は『ストロベリーナイト』のほうが多いのですが、リアリティーはこちらが上で、私は『ソウルケイジ』の方が読んでいてきつかったです。ただ、このグロテスクで精神的にきつい状態が、犯人の心情とリンクしているので、ただ耳目を引くためにショッキングなシーンにしているわけではないのが分かります。

 

 

ライバル

ストロベリーナイト』の紹介で「ガンテツ」というライバルとの手柄争いが熱いと書きましたが、今回の作品でも「日下」といくライバルが出てきます。ライバルとしてのインパクトは「ガンテツ」が断然上ですが、「日下」の方が、味があるというか、読んでいくうちに良さが分かってきていつの間にかちょっと好きになっています。

 

また、物語全体のテーマである「父性」も表現しています。単純に家庭を持っていることもありますが、主人公の姫川に対しても父親的視点を持っています。姫川は日下のことが嫌いで、日下も姫川に対し距離を持って接していますが、内心では心配しているのが分かると、ちょっと日下が好きになります。

 

 

物語の構成

『ストロベリーナイト』と『ソウルケイジ』に共通する構成があります。それは、各章の冒頭部分に主人公サイドではない人物の描写があり、しかもその時系列が本筋とは違っている点です。『ストロベリーナイト』ではこの構成があることで物語に緊張感が生まれました。

 

『ソウルケイジ』では、前作以上にこの構成が効いています。時系列が本筋と違う構成のため、犯行シーンが最終章の冒頭に来ています。上でも書いたようにこの犯行シーンはかなりショッキングなのですが、そこまでに、物語にしっかり没入している上に、繰り返し語られている物語の父性というテーマが理解できているので、犯行シーンが単なるグロテスクなものではなく、さまざまな葛藤や執念がこもったシーンと実感できます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

作者は自分の小説を料理にたとえ、こう語っています。

「料理って味の良さと、栄養という二つの要素がありますよね。僕は『マズくても栄養があるから食べなさい』という小説は目指していない。やっぱ美味しいものを差し出したい。だけど口当たりがいいだけで、何の栄養もない料理を出すのは両親にかける。読んでくださった方たちの心のなかに、何か残せるものを残せたら。心の栄養素みたいなものを与えられたら、と思いますね。」(P436)

『ストロベリーナイト』も面白いし、テーマ性がありますが、『ソウルケイジ』の方がよりおいしさと栄養素が高いレベルでバランスよく入ってると思います。なので、『ストロベリーナイト』の星四つの上、星五つを付けようと思いました。ただ、グロテスクなシーンが夢に出てくるレベルなので、おすすめ度としてはジョーカー的な意味で星一つです。

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