おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ヘンたて』 青柳碧人 超芸術トマソン

   

書評的な読書感想文051

『ヘンたて 幹館大学ヘンな建物研究会』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

青柳碧人(作家別索引

ハヤカワ文庫 2012年6月

ミステリー 青春(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

ヘンな建物を題材にしたミステリーという、ある意味開き直った設定が、個人的にはすごく好きです。また、大学のサークルが舞台なので青春物としても楽しめました。作中に出てくる「トマソン」は街中で探しました。

 

 

あらすじ

幹館大学ヘンな建物研究会、通称「ヘンたて」に入会した新入生の中川亜可美。個性豊かな仲間と一緒に新歓合宿で訪れた先は、扉が12枚ある離れを持つ老舗旅館だった。さらに高さ100メートルのエレベーター式マンション、城跡に残された隅櫓脇の謎のスペース、客室に回転ずしが流れるホテルなど、活動と称して見に行く建物は常にいわくつきで……。「へんたて」に隠された謎をゆるやかに解き明かす、新感覚の青春ミステリ!(作品紹介より)

 

 

開き直った設定

ミステリーを読んでいて常々気になっていたことがあります。トリックを成立させるために建てたんじゃないの?って思うようなおかしな構造をした建物がミステリーにちょいちょい出てくることです。建築基準法や消防法やらは大丈夫なんだろうかと、余計な心配をしてしまいます。そんな怪しげなところに寝泊りしたら、そら、事件も起きるでしょう。

 

で、この物語はタイトルからも分かりますがヘンな建物、「ヘンたて」を題材にしたミステリーです。『浜村渚の計算ノート』を紹介したときに、その開き直った世界観いついて書きましたが、この作品でも開き直った設定なのが、個人的にはかなり好きです。主人公達は「ヘンたて」を見に行ったりする大学のサークルに所属しています。当然、ヘンたてにまつわるミステリー起きます。

 

私の勝手な推測ですが、物語にしれっとおかしな建物が出てくるミステリーに疑問を持った作者が、いっそ開き直っておかしな建物をテーマにミステリーを書いてみようと思ったのが、この作品ではないかと思います。

 

 

サークルが楽しそう

主人公の亜可美が従姉妹の

「サークルなくして大学生活なしだよっ!」(P13)

のアドバイスの元、色々なサークルを試してみてたどり着いたのが、幹館大学ヘンな建物研究会。

 

とりあえず、このサークルが楽しそう。温泉旅館に行って、その旅館にあるヘンたての謎を解いたり、レンタカーを借りて江戸時代のおかしな建物を見に行ったりと。大学のときにサークルに入り損ねたことを若干後悔している私としては、ちょっとうらやましいです(大学生活は同級生とつるんで遊んでいて楽しかったですが)。

 

大学のサークルを舞台とした青春物としても楽しめます。

 

 

超芸術トマソン

作中に出てくる「ヘンたて」の一つに「トマソン」というのあります。トマソンとは何か?

街中に溢れている、意味を失ったのに保存されている建造物(P19)

のこと。例えば、窓のない壁についている庇。電柱に向かって三段だけすられている階段などです。

 

名前の由来はプロ野球の巨人の助っ人外人のゲーリー・トマソンから来てます。この選手、一年目にそこそこ活躍したため、二年目は全くの不発なのに四番に据えられ続けます。三振を見せるがために四番に据えられているさまが、意味を失ったのに保存される建造物と重なるため、トマソンと名づけられたそうです。

 

このトマソン、物語の中だけの話にしては、ちょっと設定が凝っているなと思って調べてみると、実在しました。しかもこれを考え出したのは、以前紹介した『新解さんの謎』の作者の赤瀬川原平さんではないですか。『新解さんの謎』にしても「トマソン」にしても、よくもこんなくだらないけど面白いことを思いつくなと感心してしまいます。

 

このくだらないけど、面白いトマソン。私もついつい街中で探すようになってしまいました。左の階段をよく見てください。階段を昇ると、、、、。

 

 

最上段には壁があります。

 

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今好きな作家で打線を組んでみた」で投手陣の抑えにいる青柳碧人のこの作品、ヘンな建物を題材にしたミステリーですが、人は死にません。ヘンな建物を利用した密室トリックや殺人トリック的なものは出てきますが、全体的には気楽に読めるミステリー+大学のサークルを舞台にした青春物語です。

 

はまるってほどではありませんが、気軽に楽しめ、次回作も読んでみようと思えたってことで星三つです。

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