おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『小太郎の左腕』 和田竜 長篠の戦は嘘

   

書評的な読書感想文049

『小太郎の左腕』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

和田竜(作家別索引

小学館文庫 2011年9月

時代 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

小太郎のスナイパー覚醒の瞬間は鳥肌ものです。また、その後の展開が切なくて感動しました。それ以外にも主人公・半右衛門の「漢」テイスト溢れる武者ぶりや史実に基づいた戦国時代の意外な蘊蓄も楽しめました。

 

あらすじ

一五五六年。勢力図を拡大し続ける西国の雄、戸沢家は敵対する児玉家との戦いの時を迎えた。戸沢家の武功者「功名漁り」こと林半右衛門は、児玉家で「功名餓鬼」の異名をとる花房喜兵衛麾下の軍勢に次第に追い込まれていく。そんななか、左構えの鉄砲で絶人の才を発揮する十一才の少年・雑賀小太郎の存在が「最終兵器」として急浮上する。小太郎は、狙撃集団として名を馳せていた雑賀衆のなかでも群を抜く銃の使い手だが、心根が優しすぎるため、祖父・要蔵がその才能をひた隠しに隠していた少年だ。事態は、半右衛門のある行動を機に思わぬ方へと転じていく。(作品紹介より)

 

 

あふれる「漢」臭

「漢」と書いて「おとこ」読ませる使い方は、吉川英治さんが『宮本武蔵』のなかで使っていたらしいです。真偽は確かめてませんが、、、。これ以外にも以前紹介した『死ぬことと見つけたり』の作者隆慶一郎さん原作の漫画『花の慶次』などでも使われます。勇猛さ、大胆さ、潔さ、堅い信念などを持つ人を指して使うのですが、この物語の主人公というか語り部の半右衛門がまさに「漢」です。

 

唯一、「卑怯な振る舞いをするな」といわれ育った半右衛門は

いかなる戦場でも自分の力量に任せ、気の赴くままに強敵に当たり、そして薙ぎ倒した。(P22)

とあり、「功名漁り」などと上級武士にはさげすまれもしますが、下級の武士には武者の鑑と熱狂を持って言われたりします。また、戦場の敵の真っ只中でのんびり馬に水を与えて敵兵にまでも剛の者と言われたりもします。

 

「三十(従者のあだ名)、死兵と化せ」といって戦場に赴くさまは、まさに「漢」臭あふれるマンガ『花の慶次』のようだと思いました。

 

 

思わずうなる戦国時代の真実

この物語には、要所要所で不自然ではない形で史実にもといた戦国時代の真実の姿が書かれてもいます。

 

例えば戦国時代の鉄砲・「種子島」といわれると、歴史好きの方なら長篠の戦での三段打ちを思い出す人も多いでしょう。しかし、これは史実ではなく実際は作中にあるように、鉄砲で狙撃を行うのが主な使い方のようです(長篠の戦で鉄砲が大量導入され、活躍したのは事実ですが)。弱点とされている弾込めの時間も作中にあるように、弾と火薬をセットにした早合で解消できました。

 

これ以外にも、戦闘における槍の使い方や河の渡り方など、当時の意外な姿が書かれていて楽しめます。

 

 

小太郎覚醒

物語の前半は、半右衛門の武者振りを楽しんだり、戦国時代の意外な事実に驚いたりと、わりと明るい感じで物語を楽しめます。半右衛門は戦場以外ではコミカルですらあります。

 

が、半右衛門の属する戸沢家が敵に攻められ、籠城するあたりから物語はきな臭くなります。敵に米蔵を焼かれ後の飢えた兵士達の行動は常軌を逸しているようにも思えますが、極限状態の真実が書かれています。

 

追い詰められた半右衛門はある方法で小四郎をスナイパーとして覚醒させますが、その瞬間鳥肌が立ちました。このあたりからは、夢中で読み進めてしまいましたが、衝撃的な最後は感動できましたし、個人的には納得でした。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

和田竜さんといえば『のぼうの城』で有名な方で私も以前に読んで面白かったので、この作品も読みました。この作品もとても面白かったのですが『のぼうの城』には及ばなかったということで、星三つです。

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