おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『日暮らし』 宮部みゆき 血のつながりはとは?

   

書評的な読書感想文048

『日暮らし上中下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

講談社文庫 2008年11月(ブログで使っている画像は「新装版」です)

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

物語のテーマは「家族」です。血のつながらない家族の話から、血はつながっているのにままならない家族の話に移る構成が素晴らしいです。また、いいキャラ満載のおかげで、重い話になりすぎないのもうれしいですね。

 

 

あらすじ

浅草の似顔絵扇子絵師が殺された。しかも素人とは思えない鮮やかな手口で。「探索事は井筒様のお役目でしょう」――。岡っ引きの政五郎の手下、おでこの悩み、植木職人佐吉夫婦の心、煮売りやお徳の商売敵。本所深川のぼんくら同心・平四郎と超美形の甥っ子・弓之助が動き出す。著者渾身の時代ミステリー。(上巻作品紹介より)

 

 

『ぼんくら』の続編

この物語は以前紹介した『ぼんくら』の続編です。こちらを先に読んでも問題ないのですが、人間関係やエピソードを引き継いでいるので、『ぼんくら』を先に読むとより楽しめます。

 

 

テーマは「家族」

『ぼんくら』では「庶民の身分差」が物語のキーだと書きました。身分差がある微妙な人間関係が物語の核になっていると。

 

今度の物語のテーマは「家族」です。家族の関係が全編を通して語られ、ミステリーにおいても重要な意味を持ってきます。前作同様前半にいくつか短編があってからの長編という構成になっているのですが、前半の短編で血のつながらない家族(夫婦や養子)について書かれていて、長編で血はつながっているのにままならない家族(親子)について書かれている構成が素晴らしいと思います。

 

血がつながっているのにと考えるか、血がつながっていたところでと考えるか、そもそも血のつながりなんて意味がないと考えるかは人それぞれですが、前半で血のつながらない家族について書かれているからこそ家族ってなに?とすごく考えさせられます。

 

あまり本筋に言及するとネタバレしそうなので、私が気に入ったサイドストーリーを一つ。主人公の平四郎が親しくしている岡っ引きの政五郎。その政五郎が引き取って育てている子供が三太郎・通称「おでこ」です。おでこの父親は殺人を犯して牢死。残された母親は五人兄弟でなぜかおでこだけ手放すことに(実はここでも血問題がからみます)。

 

そうして引き取られたおでこが、ある日突然ごはんを食べなくなってしまいます。政五郎は好きな女ができたといい、政五郎の妻・お紺は母親が恋しいのだろうといいます。けれど、そこには他人に引き取られて生きなくてはならないおでこの葛藤が隠れていました。

 

私のお気に入りのキャラクター・おでこの成長が描かれていてお気に入りってこともありますが、住み込みの奉公よりは濃いつながりだけど、養子とも違うおでこと育ての親の葛藤があってちょっと考えさせられます。

 

 

前作以上にキャラクター達が生き生きしています。

上で書いた「おでこ」と平四郎の甥っ子・弓之助は前回よりちょっと大人になってます。弓之助は賢すぎて、いろんな意味でちょっと将来が心配ですが。

 

前作では、得たいの知れなかった湊屋は今作では多少人間味が見られました。この点は前回のテーマ「身分」なので大商人の湊屋は身分に守られる形でしたが、今回は「家族」がテーマなので湊屋の家族関係がむき出しに書かれていて人間味を感じられたような気がします。

 

鉄瓶長屋の心といわれたお徳さんは、煮売屋からお菜屋にグレードアップしてます。お徳さんはあまり本筋には絡まないのですが、ちょこちょこ出てきて平四郎や弓之助とコミカルなやりとりをすることで、話が重くなりすぎないようにしてくれます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

お徳とのやり取り以外にも平四郎のぎっくり腰癖や弓之助のおねしょ癖などコミカルなシーンが、本筋のシリアスなストリートと上手くバランスが取れています。そのためか、前作超えの800ページ以上の大ボリュームの上、重量感のあるテーマを取り上げているのにもかかわらず、とても読みやすく、読後感もすっきりしていました。

 

前作の『ぼんくら』同様あっという間に読み終わり、当然のように次の作品も読みたいと思えるこの作品は、星四つです。

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