おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ビブリア古書堂の事件手帖』 三上延 ザ・おすすめ

      2016/02/18

書評的な読書感想文046

『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

三上延(作家別索引

メディアワークス文庫 2011年3月

ミステリー ラノベ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

古い本とその持ち主を題材にしたミステリー。ミステリーの質、控えめだけど印象に残るキャラ、蘊蓄の豊富さと全てに隙がなく、面白いです。表紙とかで敬遠している人も、本好きなら一度は手に取ってみるべきです。

 

 

あらすじ

鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。(作品紹介より)

 

 

良くぞ、このテーマを見つけてくれました

人の手を渡った古い本には、中身だけではなく本そのものにも物語がある。(P10)

この作品は、古い本とその持ち主にまつわるミステリーの連作短編集といえます。例えば

 

ある日、銀行の支店長のようなきちんとした身なりの男性が、本を売りに来ました。この男性がちょっと変わっているのは、濃い色のサングラスをかけていることです。しかし、その後、男性の妻と名乗る女性が現れ、本を売らずに引き取りたいと言い出します。売ろうとした本には夫婦の間にも易々とは越えられない秘密が隠されていました。

 

こういった謎を「ビブリア古書堂」の店主である栞子さんが解決していきます。人が死んだりしませんし、難解なトリックもありませんが、本に潜む謎が解き明かされると、納得できると同時に晴れやかな気持ちになれます。

 

 

キャラクターミステリー

の代名詞といえるこの作品。キャラクターミステリーとは何?って話ですが、ざっくりいうといわいるライトノベルよりやや高い年齢(20~30才代)を対象とした軽めのミステリー作品のことです。『謎解きはディナーのあとで』や以前紹介した『珈琲店タレーランの事件簿』などがあります。

 

この作品も”キャラクター”ミステリーというくらいなので、個性的なキャラが出てきます。ヒロインの栞子さんは「初対面の人間とは口もきけない人見知り。」なのに、本にまつわる話だとスイッチが入ったように饒舌になる女性です。この女性、ちょっと権謀術数主義者的危うさが示唆されていて、二巻以降の展開も気になる感じでもあります。

 

栞子以外にも、「ビブリア古書堂」の常連で橋の下在住の「せどり屋」・志田もいいキャラしてます(彼と女子高生の交流はなぜか心温まります)。

 

ただ、個人的に気になったのは語り部役の主人公・五浦です。彼は子供の頃のトラウマから、長い文章を読むと気分が悪くなってしまいます。彼は物語の語り役であり、ヒロイン・栞子さんの助手役でもあります。物語は五浦の視点で進行するのですが、上手い具合に読者のカメラ役とわからないことの質問役をしてくれます。そのため、五浦を通して物語り入り込むような錯覚になりました。

 

珈琲店タレーランの事件簿』の主人公も語り部役なのですが、自己主張が強い語り部で物語に入り込み辛いところがありました。

 

五浦は地味だけどいいキャラクターなのかなと思います。

 

 

読みたい本が見つかります

本をテーマにしたミステリーなので、実在の本が作中に多数出てきます。個人的に気になったのは『落穂拾ひ・聖アンデルセン 〈amazonへ〉』。『落穂拾ひ』の感想を登場人物が言っています。

「人付き合いが苦手で世渡り下手な貧乏人が、不満も持たねえで生きていく、なんてただの願望だわな。まして、そいつの前に純真無垢な若い娘が現れて優しくしてくれる、なんてあるわけねえじゃねえか」(中略)

「まあでも、そういうことが分かってて作者もあの話を書いたんだろうぜ。それは読めば分かる……あれは甘ったるい話を書く奴に感情移入する話なんだ。」(P121~122)

ちなみにこのセリフを、橋の下在住の「せどり屋」志田が言ってます。

 

もうひとつは、『せどり男爵数奇譚 〈amazonへ〉』。ここで言う、「せどり」というのは古書店で安く売られている本を買って、高く転売することです。気になります。

 

ちなみに、私はこの本をはじめて読んだとき(今回は再読)、「せどり」って言葉を知りました。これ以外にも、本にまつわる蘊蓄も豊富で楽しめます。「スピン」って知ってますか?

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今好きな作家で打線を組んでみた」で投手陣の先発を飾るこの作品。たぶんこの作品にはまらなければ、『珈琲店タレーランの事件簿』や『浜村渚の計算ノート』も読んでなかったと思います。

 

この作品は斜に構えて読めば、突っ込みどころは色々あると思います。ただ、テーマ、ミステリー、キャラ、蘊蓄とどれも隙がなく面白いです。また、鎌倉が舞台って言うのも個人的にはツボです(ここ数年、年一回は鎌倉に旅行に行っているので)。なにより、作品の中に「本」に対する愛があふれてます。表紙やレーベルで敬遠している人でも、本好きなら一度は手に取って欲しいってことで、最高評価の星五つです。

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